半兵衛

ションベン・ライダーの半兵衛のレビュー・感想・評価

ションベン・ライダー(1983年製作の映画)
3.5
学生時代初めて見たときはあまりにも訳がわからなくて困惑したが、今見てもそうだった。

相米慎二監督特有の長回しによる役者のエモーショナルな動作を優先しすぎたため話は崩壊し(二時間以内と収めるという上層部からの要求があったため無理矢理カットせざるを得なくなるという事情もあった模様、悔しさのあまり監督は「現像所へ行ってネガ燃やすぞ!」と叫んでいたとか)、誘拐されたイジメ野郎を助けてけじめをつけようとする少年たちと誘拐したヤクザとの追っかけあいということしか頭に入ってこないけれどそれでも田村正毅による荒々しくも瑞々しさを放つ長回し映像や上手い下手どころの話ではなく全身でぶつかるように演技をする役者たちの体当たり演技は素晴らしくてここだけでも見れて良かった。特に材木置き場での壮絶すぎるアクションは、ここだけでも映画史に残る名場面と呼べる凄いシーンと言える(河合美智子から直接聞いた話では、この場面の過酷な撮影で死人が出て撮影が中止になることを期待していた原日出子は撮影が何事もなく無事終わったので悔しがっていたらしい)。

映画をある程度理解してから見直すと、大人世代を代表する落ちぶれたヤクザに日活ニューアクションからテレビドラマで活躍した藤竜也に演じさせそんな彼がまるで未成年の新しい役者にバトンを渡すかのようなラストが心に残る(実際はこの映画のあとも藤竜也は現役で頑張っているけれど)。

ちなみに『ションベン・ライダー』と併映されたのが押井守の『うる星やつら オンリー・ユー』、本作を見て自分が可もなく不可もなく映画デビュー作を作っていたことを反省して『ビューティフル・ドリーマー』を製作したという意味でもこの作品の価値はあると言えるかも。
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