じゅじゅ

イリュージョニストのじゅじゅのレビュー・感想・評価

イリュージョニスト(2010年製作の映画)
3.6
大人向けのほろ苦く切ない作品です。

アニメーションだと思わずに見たので最初驚きました。
そして映像の美しさにも。
台詞がほとんどありません。
でもそんなことは全く気にならないほど水彩画風のノスタルジックな情景やキャラクターの動きに魅せられ、物語の世界に入り込んでいけます。
ワンシーンワンシーンがまるで絵本を切り取ったかのように美しく、アニメーションであることを忘れさせるかのような動きの細やかさにびっくりさせられます。
日本のアニメーションとは全く違う良さです。

話の筋は時代に置いてかれたその日暮らしの老手品師が手品師を辞めるまでのいたってシンプルな話です。
安宿で働く貧乏娘に魔法使いだと思われついてこられ、自身もその娘を生き別れた娘に重ねつつ喜ばせてやろうと一生懸命父子的な愛を注いでやります。不器用に、時にはガソリンスタンドで働きながら。

移ろう時代、移ろう人々、そして移らざるを得ない人々、映画的展開はなく極めて現実的に話は進んで行き幕を閉じます。
年齢が高いほどこのストーリーは身に染みるかもしれません。

“魔法使いなんていない”
とても余韻の残る映画でした。
じゅじゅ

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