まりりんクイン

ゴーストライターのまりりんクインのレビュー・感想・評価

ゴーストライター(2010年製作の映画)
4.3
ヒッチコックテイストのポランスキーと言うのか、
とにかく「優雅」と言う言葉がぴったり来る。

絶対に何も起こらなそうな殺風景な灰色の景色、
一見何も起こってないように思える淡々とした演出とストーリー、
ミステリーとしてのオチはわりとありきたりだし、勘が良ければ途中で気付くかもしれません。
しかし、何も起こっていないように見えるその裏でうごめく物の底知れなさや強大さが見え隠れするたび、真綿で首を絞められるような感覚が、オチなんて事どうでも良くなるほどの映画的快感を与えてくれます。
また、その中心にいる主演のユアンマクレガーが放つ陽な雰囲気がこの作品に独特のユーモアを加えてます。

派手な見せ場やアクションシーンはほとんど無く、唯一信じられないくらい地味なカーチェイスシーンが一つあるのみ。
しかしこのカーチェイスが恐い。信じられないくらい恐い。
地味な分、「全く得体の知れない何か」に追われている恐怖を身近に感じてしまう。

真相が分かってから振り返ってみると、「...と言う事はこいつ、あの段階からしかけてやがったのか...」と震え上がる事必須。

『ゴースト』ライターという
「他人の意思を文章に書く」
事をしていた主人公が、はじめて
「自分の意志で文章を書いた」
結果、迎えてしまう結末が何とも皮肉です。

寒い冬、あったかい部屋の中でコタツに入りながらツマミとウイスキー片手にこの映画を観る…
なんて贅沢なひと時なんでしょう!
冬が待ちどおしい!
まりりんクイン

まりりんクイン