Melko

グラン・ブルー完全版 -デジタル・レストア・バージョン-のMelkoのネタバレレビュー・内容・結末

3.6

このレビューはネタバレを含みます

「海底はつらい。そこから上がる理由が見つからないから。」

「行きなさい。私の愛を見てきて。」

これも、ずっと見たかった作品。
前情報をできるだけ入れずに鑑賞、実在のダイバー2人がモデルになってるとは。
そのうちの一人、ジャックマイヨール。

日付超えちゃったけど、45年前(1976年)の今日11月23日は、人類史上初、ジャック・マイヨールが素潜りによる潜水で100m超の深さに到達した日だそうで。全然知らなかった、なんという偶然…!

海の絵は圧倒的に綺麗で、男同士の力強い友情と、愛し愛されてるのに完璧には相入れることのできない男女の愛など見どころたくさんなのだけど、長い。とにかく長い。
潜水シーンが長いのはテーマ的に仕方ないにしても、その他のエピソードがなんだか助長に思えてしまって、どれもこれもがうっすーく引き伸ばされたかのよう。
大自然と人間ドラマの感動を期待して見たため、なんともガッカリ。この編集で2時間50分はキツすぎる。132分バージョンで見たかったな。
とはいえそれでもなんとか完走できたのは、海の美しさと、ジャック役の俳優の、いつまでも見てられるビジュアルの良さ故。
吸い込まれそうな瞳と無邪気な笑顔。これは誰でも惚れてしまう。ちょっと良いように描きすぎでは?と思うほどだったけど笑

散りばめられたエピソードや挟まるカットで思い知らされる、ジャックとその他の人間達との感覚の違い。ジャックは人魚なんだ。イルカが彼の家族。海の中では、言葉も遠慮も要らない。ただ、心地よい流れに身を任せるだけ。
海が彼を呼んでいる。

そんな彼の感覚や想いを理解できるのは、親友エンゾだけ。豪胆な性格は、無口で朴訥としたジャックと正反対だが、心に滾る海への想いは同じ。だからラストで海へ埋葬される展開は涙が出そうになった。自分との闘い、記録を破り破られる焦りや不安はありつつ、それでもひたむきに海へ潜る感覚を共有できる2人。
エンゾ役ジャンレノの出世作だそうで。なるほど、含蓄ある表情やマンマに頭の上がらないコミカルな感じが印象に残る。

そんな熱すぎる男2人に完全に置いてけぼり食ってる感じに見えたジョアンナ。
んー、完全に好みの問題なんだけど、私の好みのお顔ではなく、どうしても彼女が可愛く見えなくて、ジャックと釣り合わないように感じた。海での悲痛な叫びとラストの涙は良かったけれど。
ジャックのような人とは、子どもをもうけて陸で平穏に暮らすことなんて、できない。なぜなら彼は、人魚だから。
ハッピーエンド信じるマンもさすがにこのラストは屈服せざるを得ない。ジャックはイルカに連れられて行ってしまった。
戻ってこないと思う。でもある意味これはハッピーエンド。だって海こそが、彼のいるべき場所なのだから。

子どもの頃大好きでよく見てたアニメ「七つの海のティコ」の主人公ナナミを思い出した。5分以上息を止めて水深100mまで潜水できる。シャチのティコが相棒。
小さい頃、ナナミに憧れてたなぁ。
私は泳ぎは好きなんだけど耳鼻が弱いので、そもそも潜水が苦手。おまけに閉所恐怖症、海底は暗くて閉塞感があって怖い。
でもなんだろう、ナナミやジャックが海で悠々と泳いでる姿を見ると、またいつか潜ってみたい気持ちになった。

そんな、モデルとなったジャックマイヨールご本人は、晩年鬱を患い首吊り自殺したそうで…今から20年前の話。
それから15年後、エンゾも天へ昇った。
戦友2人は向こうの世界でも競い合ってるだろうか。

いや〜、そんな想いを馳せるほどなかなか不思議で印象に残る作品ではあったけど、一つ勘弁ならないのは、後半で出てきた日本チームの描かれ方。ふざけ倒しておる笑
Melko

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