JackBurton

ヨコハマBJブルースのJackBurtonのレビュー・感想・評価

ヨコハマBJブルース(1981年製作の映画)
5.0
松田優作演じるブルースシンガーは、元ブロンクスの刑事で今はバーで歌う傍ら探偵業を行っている。ブロンクス時代の仲間である刑事と会っている時彼が何者かに狙撃され、その濡れ衣を着せられ真犯人を暴こうと言う物語。

他のレビューでBJが明と出会いゲイに目覚めたと言うようなものを目にしたが、それは違うと思う。中盤長尺で彼らが遊んでいるカットがあるが、それはまるで兄弟のよう。ラストに湯灌をし、本当はゲイではなかった明を男として葬る為に服にヌード誌を詰め込んでいる事からそれが分かる。
明が牛宅麻の娘に手を出したのも、もしかしたらそのカットの中で言っていた"スカーフェイスのアルパチーノみたいになりたい"と言うセリフに繋がってくるのかもしれない。スカーフェイスだとトニーはボスのフランクの情婦エルヴィラを奪うからである。

今まで見た殺人遊戯やドラマ探偵物語とは違い、明るい部分を排しクールでかなりハードボイルドな作風になっている。松田優作の見た目も長い髪に髭と見慣れない姿で馴染めなかったが、それ以上に物語や映像が好みで好きになったし見て良かった。

何せアルトマンのロンググッドバイが大好きで、この作品が似ていると言うのを知ったので松田優作主演と言うこともあり興味をそそられた。
映像や光と影の具合、それに色合いがどことなく70年代のアメリカ映画っぽくて凄く良い!

確かに物語の流れはロンググッドバイに近いが独特の良さがある。ブルースバーまで走って向かうオープニングと、ラスト椋の乗った車に向けポケットから取り出した銃を握り直し正面にかまえ撃つシーンが大好き。
オープニング松田優作が歌う灰色の街が特にお気に入りの歌。

邦画を見てる数が少なすぎるので何とも言えないが今の所邦画マイベスト!

追記:
何人かの人のレビューで"工藤俊作のその後がBJなんじゃないか?"と書かれているのを目にした。
探偵物語を全て見るまでは全くキャラクターが違うだろと思っていたが、全話見終わってあの最終回ならと納得した。

ここからは個人的な見解だが、ダウンタウンブルースまで工藤が全身黒な格好で登場したことが無いはず。あの黒ずくめの服装は工藤俊作と言う人間のネガティブな部分なのではないかと考える。だからレジ打ちやバーテンにまでイライラしていたのではないかと。(序盤友達の女性との会話で、自分は暗い人間だと言うセリフもあったはず)
男を匿うも組織に何人も仲間が殺され復讐を行う。そして終盤プールバーに出てきたのはいつもの白いスーツの工藤。これは復讐を果たした後のポジティブの象徴であり、明るさを取り戻しつつあったのではないかと思う。その後逆恨みでレジ打ちに刺され(=ポジティブな部分が失われ)ラスト身も心もがバックに流れる中登場したのは、また真っ黒な(=ネガティブ)工藤で暗い人間に戻ってしまったと言うことなのではないかと思った。
その彼がBJと名を変えてヨコハマで探偵を続けていたのではないのかななんて想像も出来る。

工藤とBJ共通点も多く、元はアメリカで刑事をやっていたこと。それに付けてる時計が一緒。
それらを松田優作が意図した事かどうかは分からないが、彼がアルトマンのロンググッドバイを好きだったことが良く分かる。(探偵物語でよく解決後スキップして帰る事や、本作がロンググッドバイを参考にしていると答えている事など)
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