このレビューはネタバレを含みます
大学で経済学に一応触れた自分にとってはナッシュは超有名人であった。しかし、ナッシュの人となりは詳しく知らなかった。
天才中の天才はどこか短命であったり、身体に不調があるものだなと思っていたが、想像よりも壮絶な人生を送っていた。
自分の見える世界が本当なのか、幻覚なのか、本当でもあるし、幻覚でもある。
全部幻覚ではないのが、厄介なところ。
今まで積み上げて来たと思った物が、全部意味をなさないとわかったときの絶望は計り知れないものだっただろう。
病だとわかった時のシーン
自宅療養中のナッシュが密かに研究をしていた森の小屋の中の異常な様子は、ゾッとした。
自宅で過ごす日々の段階では、アリシアはもちろんつらいし、ナッシュ自身も自分で何がなんだかわからなくなり、やりきれない思いであった。
ナッシュが再び大学に戻り、自らの病と葛藤しながら研究を続け、幻覚と現実をどちらも認識できるようになった。
そして、図書館で学生と会話し、談義している様子をアリシアが感慨深げに見ているシーンは感動的だった。
年老いてもなお研究を続け、ノーベル賞を受賞し、ペンが並んでいくシーンも感動した。
長きにわたり、あらゆる分野に貢献し、病も快復し、穏やかな人生を送っていただけに、事故死という最期はあまりにも不運であった。
ナッシュ博士のご冥福をお祈りします。
最後に印象に残った台詞。
「マッカーシーはアホだが、正しかった。」