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鬼龍院花子の生涯のmyjstyleのレビュー・感想・評価

鬼龍院花子の生涯(1982年製作の映画)
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冒頭の人力車が走る場面で、すでに役者の表情がよく、制作現場のパッションを感じました。タイトルがあまりにも有名な本作ですが、てっきり鬼龍院花子とはヒロイン夏目雅子のことだと思っていました。でも、ヒロインの名前は松恵で、花子は妹です。だとすると、原作は実の子に生まれ、奔放気ままに、でも、強かに生きた花子の生涯を描いているのでしょうね。養女の松恵は控えめで一見大人しく見えますが、自分の生き方を曲げない聡明で芯の強い女性です。侠客を気取った政五郎は男気で生き抜ける渡世ではなく、凋落ぶりが哀れでした。岩下志麻演じる政五郎の妻は、彼女の熱演にも拘らず、脚本の掘り下げが不十分で人物像が浅い。宮尾作品が土佐の男の男気を描いたのではなく、男の滑稽さ哀れさを描き、渦中に生きる気丈な土佐の女を描いたのだとわかりました。今、これだけの邦画が生まれないと思うと残念です。
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