いかえもん

鬼龍院花子の生涯のいかえもんのレビュー・感想・評価

鬼龍院花子の生涯(1982年製作の映画)
3.6
これ、パッケージ写真が…AVみたいやん。ぜんぜん違うのに~!
五社監督の高知3部作のひとつで、任侠ものですが、原作が女の一生書かせたら、この人か有吉佐和子さんではないかと個人的には思ってる宮尾登美子さん原作なので、文学的要素もあり、骨太な作品になっていると思います。

京都の遊郭で発見された女性の死体の身元確認に訪れた女性、鬼龍院松恵。高知の侠客鬼龍院家に養女としてもらわれていった松恵を通して、鬼龍院一家の栄枯盛衰と松恵自身の生きざまが描かれます。実話だそうです。
この松恵を演じるのが、夏目雅子さん。私は西遊記のドラマで三蔵法師役をしてらっしゃった彼女しか知らなかったので、今回の映画でその演技の力強さに驚かされました。若くして亡くなられたのが非常に残念です。
「なめたらいかんぜよ!」という彼女の啖呵がこの映画では非常に有名なんですが、いや、ほんとに痺れました、かっこよくて。そして、映画の主役は花子ではなくこの松恵と仲代達矢さん演じる鬼龍院家の親分、通称鬼政(オニマサ)なんですが、この親分が、めっちゃ怖いし、やること言うこと無茶苦茶なとこもいっぱいなんですけど、時にすごくチャーミングなところがあって、憎めない…。
最後の松恵とのシーンは泣いてしまいました。

ウィキペディアのこの映画の撮影秘話みたいなのがとても興味深かったです。この映画は、人生のどん底にあった五社さんが再起をかけた映画でもあり、岩下志麻さんが初の姐さん役をされた映画でもあり、これが後の極道の妻たちシリーズにつながったそうです。この岩下志麻さんがまた、こわいこわい!まるで能面ですよ。お願いやから笑って…って感じでした。

吉原炎上を見たときも思いましたが、親分の家には本妻の岩下志麻とそれ以外に妾が二人一緒に暮らしていて、みんな咥え煙草で土佐犬の闘犬を見てるとか、煙草のシーンが多いだけでクレームがつくような今の時代では地上波での放映は難しいのかなぁと思います。でも、吉原炎上もそうですが、実際にこんな時代があったのだということを知るのにはいい映画だと思いますね。