かーくんとしょー

ハリー・ポッターと炎のゴブレットのかーくんとしょーのネタバレレビュー・内容・結末

1.7

このレビューはネタバレを含みます

「ハリー・ポッターと炎のゴブレット」は、元々好きな部分と嫌いな部分がはっきり分かれる原作だった。

まず嫌いな部分は、予想外の展開でトライ・ウィザード・トーナメントに引きずり込まれたハリーに対し、友人たちは無論、大人たちも余りに冷たいことだ。
原作にケチをつけても始まらないので余計に踏み込まないが、映画版でもこの点は見事に再現されている。

対する好きな部分は、これまたとても印象的な場面の数々だ。
シリーズは次作から本格的にダークな世界観に突入することもあり、「炎のゴブレット」が明るい話題のある最後の作品とも言えるからだ。

さて、まず私の好きな部分の一つ目は、何はさておきハリーの初恋だ。
結論だけ簡潔に言おう、チョウ・チャン役のオーディションは、この世のオーディション史上に残る最悪の結果だった、と。

二つ目は、セドリック・ディゴリーという数少ないハッフルパフ寮生の活躍だ。ただ活躍するでなく、彼がハッフルパフの名に恥じぬ優しく朗らかな男だからこそ意味のあった。
この点も映画の描き方には満足できず、他の生徒よりはマシだが、セドリックの性格の良さもあまり描かれておらず、キャスティングのせいか少し軽薄で自尊心が強いようにも見えてしまっている点は残念でならない。

三つ目は、ダンスパーティーにまつわるシーン。ダンスの練習、相手を誘い、おめかしをしてパーティーへ。一連の流れの中には英国らしいウィットに富んだやり取りが多分に含まれ、ダンス文化のない日本人にも非常に楽しい。
映画では、これらのシーンは再現度がまずまず高かった。マギー・スミス(マグゴナガル先生)の腰は言うほど太くはなかったが、ロンのアンティークな衣装やハーマイオニーの変身、そして二人の仲違いと見所満載である。

最後の四つ目はーーおそらく多くの人も同じ意見ではないかと思うのだがーークィディッチW杯だ。このスポーツは、場合によってはハリー・ポッターよりも偉大なJ・K・ローリングの発明と言えるかもしれない。そのW杯がこの年に行われ、世界的シーカーであるビクトール・クラムの活躍に胸を躍らせる……。
……はずだったのだが、胸躍らせて余韻の冷めないウィーズリー一家がいきなり眼前に現れた。一瞬、ディスクの不具合でシーンが飛んだのかと思ったほどだ。盛大な応援合戦とダイナミックな選手入場が繰り広げられていて、鑑賞者のボルテージも最高潮に達していたのだから。
この原作愛のカケラもない場面カットは、映画版ハリー・ポッターシリーズで最も苛立ちを覚えたシーンの一つだ。あのボーバトンとダームストラングの不要な入場シーンをカットしろと思わずにはいられない。

文句がほとんどを占めてしまい恐縮だが、この映画版の「炎のゴブレット」には原作ファンは幻滅し、原作を読んでいない人にはイマイチ魅力が伝わらないのではないか。
ハリー・ポッターシリーズは、シリーズの持つ力が強いが故にここで観るのをやめる人は多くはないかもしれないが、それでもこの四作目は〈停滞〉を示す作品と言わざるを得ないだろう。

written by K.
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