ともぞう

張込みのともぞうのレビュー・感想・評価

張込み(1958年製作の映画)
3.2
野村芳太郎による松本清澄原作の監督第一作。刑事ものだが大捕物という程のアクションもなく、人間の愛憎劇がメイン。何より高峰秀子の演技に見惚れる。駆け落ちを決意した男が逮捕される、それを聞かされた時の高峰秀子の号泣は身につまされる程、切なかった。切ない女の行く末を案じた刑事は不遇な女との結婚を決意する。まさに人間ドラマ。あと、昭和33年は体重をkgでなく貫目で言ってたこととエアコンが普及してなかったので、夏が本当に大変だったんだろうな。そんな汗だくの中、夜行特急で床に座って東京から九州までとか地獄過ぎる。

〈あらすじ〉
警視庁捜査第一課の下岡雄次(宮口精二)と柚木隆雄(大木実)は、質屋殺しの共犯石井(田村高広)を追って佐賀へ発った。主犯の自供によると、石井は兇行に使った拳銃を持ってい、3年前に上京の時別れた女横川さだ子(高峰秀子)に会いたがっていた。横川さだ子は今は佐賀の銀行員の横川仙太郎(清水将夫)の後妻になっていた。石井の立寄った形跡はまだなかった。両刑事はその家の前の木賃宿然とした旅館で張込みを開始した。さだ子はもの静かな女で、熱烈な恋愛の経験があるとは見えなかった。ただ、20才以上も年の違う夫を持ち、不幸そうだった。猛暑の中で昼夜の別なく張込みが続けられた。3日目。4日目。だが石井は現れなかった。柚木には肉体関係までありながら結婚に踏みきれずにいる高倉弓子(高千穂ひづる)という女がいた。近頃2人の間は曖昧だった。柚木には下岡の妻の満子(菅井きん)の口ききで、風呂屋の娘との条件の良い結婚話が持ち上り、高倉弓子の方には両親の問題があったからだ。1週間目。柚木が1人で見張っていた時、突然、横川さだ子が裏口から外出した。あちこち探した末、やっと柚木は温泉場の森の中で横川さだ子と石井が楽しげに話し合っているのを発見した。彼が応援を待っている間に2人はいなくなる。再び探し当てた時、さだ子は石井を難詰していた。だが彼女は終いには彼に愛を誓い、彼と行動を共にすると言う。しかし下岡刑事が到着し、石井はその温泉宿で逮捕された。この張込みで、柚木は女の悲しさを知らされ、弓子との結婚を決意した。「今日からやり直すんだよ」柚木は小声で石井を慰めた。それは自分へ言い聞かせる言葉でもあった。
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