【1987年キネマ旬報日本映画ベストテン 第7位】
『うなぎ』今村昌平監督が大々的な東南アジアロケをした作品。カンヌ映画祭コンペに出品されたが、国内での興行は失敗に終わった。東映は本作の上映を打ち切り、『極道の妻たちⅡ』に切り替えた。
今村昌平はどうしても合わない。同時期の女衒ものなら五社英雄の方が断然好き。演者や美術はよくやっているとは思うがどうも鈍重に感じられる。
「国のため」を信じて流れるままに女衒となった実在の人物、村岡伊平治の生涯を描いている。とにかく主体性のない男として描かれる村岡伊平治。『キラーズ・オブ・ザ・フラワームーン』のディカプリオっぽいなと思ったりした。
キャストでは倍賞美津子がよかったかな。独特の低音ボイスを活かして伊平治の妻を見事に演じていた。
実体のないものを信じて生きてきた伊平治という男の哀れさを描くラストはなかなかよかったが、唐突さを感じた。時の流れや人物配置が長尺の割に唐突で違和感があった。
スケール感は大きく、プロダクションのレベルは高いが、あまり心に残るものがなかった。