CHEBUNBUN

夜のCHEBUNBUNのレビュー・感想・評価

(1961年製作の映画)
3.0
【豊穣な退屈さ】
「死ぬまでに観たい映画1001本」掲載のミケランジェロ・アントニオーニ映画『夜』を観た。『太陽はひとりぼっち』に次ぐ荒涼とした描写が魅力的な作品であった。

『バビロン』や『リコリス・ピザ』、『ウルフ・オブ・ウォールストリート』など昨今の狂乱を描いた作品は豪華絢爛、酒池肉林のような世界で煌びやかに祭の渦中へと吸い込まれる人々が描かれている気がする。しかし、ミケランジェロ・アントニオーニの映画を観ると、デカダンスとしての豪華絢爛さの描き方があると痛感させられる。『夜』の場合、大雨が降る中、崩れ落ちるようにプールに入っていく女、一対一のカード滑らせバトルの冷たさから群になった時の、盛り上がりはあるけれど個が見えてこない空間にそれは現れていると思う。恐らく、昨今の退廃が忙しないだけなのは、スマホ時代になり、常に情報の渦に我々が巻き込まれているからであろう。スマホのない時代、娯楽が人と人と交わることぐらいしかなかった時代において、空白の時間が多かった。おしゃれな間取り、空間の中に身を投じる、作家として創作の素材に囲まれた空間にいても、孤独の気配がすぐそばにある。パーティに行っても、一度パーティの外側に行ったら孤独が広がっている。アントニオーニは、群衆の熱気の外側を描くのに長けた監督なのではないかと感じた。そんな豊穣な退屈さに酔いしれた作品であった。
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