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星の旅人たちのnicol96のレビュー・感想・評価

星の旅人たち(2010年製作の映画)
4.2
不慮の事故で息子を失った眼科医おじさんが愉快な仲間たちと亡き息子の意思を辿る聖地巡礼系ロードムービー。

平日は開業医としてあくせく働き、休日は仲間たちと優雅にゴルフ、そんな"成功"した人生の後半に差し掛かった主人公からすると、30そこそこの息子がポスドクをドロップアウトして世界を見て回りたいなんて、まぁ到底理解し得ない思考だと思う。
結果的にその過程で亡くなった息子を前に、そこで目を瞑るのではなく先を理解しようとしたのは素晴らしい。

どんな人生であれ、歳月は人を豊かにする知識にもなるし、同時に視界を狭める衝立にもなる。
亡き息子の考えを理解するための旅の果てに主人公が気づいたのは、自分自身について知らないことがまだたくさんあって、もっとそれを知ることができるというかけがえのない気づきだったんだろう。

我々は資本主義的価値観における尺度や成功モデルを日頃から湯水のように浴びせられては、それをなんの抵抗もなく自身にも当てはめ、時に溺れそうになる。
それはそれである程度受け入れざるを得ないとは思いつつ、ほんの少しでも顔を上げて一呼吸することの大切さを教えてくれる良作。
まぁとはいえ現実社会はその一呼吸にも相応の資産を求めてくるから手に負えないよね。

サンチャゴ・デ・コンポステーラは前から訪れてみたい場所だったけど、まさか映画を通して見ることになるとは。自転車旅したいなーーー
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