ひろぱげ

こわれゆく女のひろぱげのレビュー・感想・評価

こわれゆく女(1974年製作の映画)
3.6
「刑事コロンボ」でお馴染み、ピーター・フォーク演じる土木技師の「うちのかみさん」(ジーナ・ローランズが演じるメイベル)が段々こわれていくお話。

「こわれていく」と言っても、メイベルは一人で勝手に狂っていくわけではなく、「A Woman Under the Influence」という原題の通り、何かの影響の下に、クスリでもやってるみたいに変になっていくのである。
旦那であるニックがいきなり激昂して怒鳴りつけたり、「ぶっ殺してやる!」とキレてみたり、彼女に手を上げたりすることも要因だと思うし、ニックの母親も「この女を早く入院させて!!」とヒステリックになったり、メイベルの両親にも色々と問題があったり、子どもたちは至って子供らしく自由に振る舞ったりするので、元々の情緒不安定さも手伝って徐々に精神的におかしくなっていくメイベルであった。思ったことを何でも口に出してしまい、相手を気まずくさせたり、何事にも一生懸命で完璧を求めるあまりパニック気味になったり、身近な人々の言動からの影響を受けやすかったり、彼女は今で言うADHDみたいな気質があるのかもしれない。また、精神病院に入院させられた時には「頭に電極を付けられ・・・」なんて言ってたので、当時の精神疾患に対する治療とか、周囲の偏見とかは今とは比べものにならないほど酷かったと思う。

ジーナ・ローランズの演技はやっぱり凄いけど、ピーター・フォークも、仕事で疲れてイッパイイッパイな感じやちょっとせっかちで無骨な性格を体現していて、「本当にこういう人たちの生活を見てるんだ」という気になっていく。そしてさらに、子どもたちの自然すぎる&絶妙な芝居が素晴らしい。

元々はカサヴェテス監督が妻であるジーナのための舞台台本として書いたものだそうだが、それを読んだジーナ・ローランズは「こんな演技を毎晩、一週間も続けていたら私ホントに入院しなきゃならない。ヤメテ。」と言って、映画用に書き直すことになったとのことである。確かにこれを舞台のスケジュールで演じるのはしんどいよな。

序盤でニックの仕事仲間が集まって食べてるスパゲッティが全然美味しそうじゃないのと、終盤の「家族だけ」になった家のシーンが素晴らしかったのが印象的。ラストには少しだけ希望を感じた。
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