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ニーチェの馬のchanmasuのレビュー・感想・評価

ニーチェの馬(2011年製作の映画)
3.7
映像の質感は現代的で、モノクロだが古さを感じさせない。まだ湯気の出るジャガイモを手で食べたり、そういう日常の細かい描写の積み重ねが叙情的な効果を生んでいる。スケールの小さな、2人の生活しか描いていないのにそこには長い歴史が漂う。
人はこうして何年も暮らしてきたのだと。
何も起きていない画面でも光の影が動いていたり、風が吹いて木の葉が飛んでいたり、湯気が上っていたり、画面上の光の動きが止むことはない。常に変化しており、極めて映画的なのだ。だから、飽きない。
家を出て引き返して娘が先に家に帰り、窓から父親を見ているシーンは強烈だ。モノクロで顔は骸骨の様に見え、じっとこちらを覗き返している。キメて撮っている様な、異質な場面。人物がこちらを見るのはこれが唯一か?タルベーラは生活を無常に感じているのかな、と思った。
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