RUSTICSTOMP

ニーチェの馬のRUSTICSTOMPのレビュー・感想・評価

ニーチェの馬(2011年製作の映画)
4.0
虚実の反転。スクリーンがなければ観客はなく、主題がなければ背景はない。
演出と自己言及の騙し絵といえるユスターシュの『豚』をさらに洗練した作品だと思う。
湯気のにおい立ちそうな洗いたてのブラウスのクロースアップが、次第に背景となり画面を埋めつくす。
木戸に閉じこめられた馬にフォーカスがあてられると、人間の生活のほうは背景へ押しやられる。
エッシャー的な図と地の反転がテーマのひとつだろう。しかし絶望と対になる希望だけは最後まで描かれない。スクリーンに映された絶望が、それを眺めている観客の希望を示唆するパースペクティブ…ウルトラCである。
『豚』より洗練されていて、より概念的で完成度も高い。
しかし『豚』のほうが好みだ。