いとJ

軽蔑のいとJのレビュー・感想・評価

軽蔑(2011年製作の映画)
-
 中上健次の同名小説の映画化。今、何本か中上原作の映画を観ているが、これは中上健次を神話化しないために必要な作業かな、と思えてくる。中上健次の死=近代小説の終わり、みたいに語られてしまう人なので。

 長回しや構図の決まり方など美学的に素晴らしい点はあるが、表象としてはうーむ、というところがあるので、その点を。

 カズ(高良健吾)は、遊びまくり人に盾突きまくり借金しまくり、自分の欲望に忠実すぎな人物。ただ、純粋で優しい面もある。一言で言うと、「少年」的。そして、彼の幼児性をほぼ全面的に受け入れる真知子(鈴木杏)は、「母」的。図式的に見過ぎかもしれないけれど、カズの「ヒモになる」発言とかラストシーンなんかは、男性を完璧に庇護する強く優しい女性を肯定する感じをかなり強く受けた。これは廣木監督の問題なのか、原作はどうなのか、気になる。

 田舎の閉塞感、家柄や血にこだわる家庭、みんながみんなの顔を知っている、という感じは、原作もそうなんだろうな、と思った。閉塞感から抜け出そうともがく2人を描いた作品、とまとめてもいいかもしれない。いやしかし、ラストシーン、血だらけで息絶え絶えの人を抱えながら、どうやってタクシーに乗ったのだろう。そこを突っ込んでも仕方ない気もするが。
いとJ

いとJ