Omizu

17歳のカルテのOmizuのレビュー・感想・評価

17歳のカルテ(1999年製作の映画)
3.7
【第72回アカデミー賞 助演女優賞受賞】
アンジェリーナ・ジョリーが助演女優賞を獲得した作品。原作の自伝にウィノナ・ライダーがほれ込み、主演だけではなく製作総指揮も担当している。監督は『フォードvsフェラーリ』などのジェームズ・マンゴールド。

今考えるとすごいキャストで驚く。ウーピー・ゴールドバーグ、ヴァネッサ・レッドグレイヴといったベテラン勢やライダー、ジョリーはもちろん、ドラマ『ハンドメイズ・テイル 侍女の物語』エリザベス・モスに『モービウス』ジャレッド・レト、早世した『8 Mile』ブリタニー・マーフィーと若いメンツがすごい。

スザンナ・ケイセンの自伝『思春期病棟の少女たち』が原作で、それを上手く映画化していると思う。マンゴールドは職人監督として力強くスピード感のある演出が特徴で、本作もそれはいかされていた。

前半時系列を前後させるのだが、その繋ぎが非常に上手い。同じ動作からスムーズかつ正反対のシーンへと飛ぶドラマチックな構成がいい。後半もスザンナの複雑な心を繊細に描きつつも見せ場はしっかり盛り上げる。

家庭環境への不安から家へは戻らない、ここにいたいと思っているが、精神病院はいつか出なければならない場所だと気づく。心の揺れを繊細に描いている。

おそらくジェイミーと同性愛関係になったのだろうリサを演じたアンジーはその濃い顔を生かして粗削りだがすごい演技をしている。ライダーは完全にアンジーにお株を奪われる形になったが、彼女も十分好演している。アンジーの方が美味しい役だったというだけ。

ベトナム戦争やヒッピーカルチャー、黒人運動が背景になっており、それとの絡ませ方もよかった。少し強引な気がするがまあよし。

ただ気になったのはスザンナ以外の患者たち、リサを始めとする「友達」たちに結局救いが見えなくなっていること。スザンナは結局精神病院のやり方に迎合しただけで、リサたちをどうにかしようとは思っていない。そこが保守的に感じられた。時代の限界なんだろうか。

若い女優たちのエネルギーを上手く捉えたある種の青春ものとしてよくできている。詰めが甘いところが気になるが、精神に問題がある身として心動かされた一作だった。
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