Laura

拾った女のLauraのレビュー・感想・評価

拾った女(1953年製作の映画)
4.0
1953年、赤狩り真っ只中のハリウッドで作られたフィルムノワール。ニューヨークの満員電車の中で男たちが美しい女を窃視している、この冒頭のシチュエーションからして素晴らしい。女が引き渡しに失敗したフィルムの切れ端はいわゆるマクガフィンで、これでもかというほどスピーディに全体を引っ張ってゆく。セリフのテンポが良く、特に警察での会話や情報屋との交渉の場面はキレキレ。リチャード・ウィドマークがいかにも手ぐせの悪そうなチンピラを好演している。『革命児サパタ』(1952)では可憐だったジーン・ピータースの身持ちの悪そうな女ぶりもたまらない(調べたらハワード・ヒューズとの結婚歴もあってなかなか凄いところまで登りつめたようだ)。情報屋で日銭を得るセルマ・リッターの役どころはいかにも観客の共感を誘いそうだが、「売国奴になるよりもスリとして生きたほうがマシ」といった思想性の強いセリフも随所に忍ばせられていて、ハリウッドの巧みなプロパガンダだ。
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