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グラン・トリノのbluetokyoのレビュー・感想・評価

グラン・トリノ(2008年製作の映画)
4.2
2024年12月13日 13:40~ テレビ東京 吹替え
見事、それ以外言いようがない。前半はやや退屈な感じだが、おそらく、ベトナム戦争のことを念頭に描写してあって、取っ付きにくく感じてしまうのだろう。後半は、一分の隙もない仕上がり。わんこもちゃんと、隣家に預けていく。わんこはわかっているかのように床におとなしく伏せるのだ。わんこの悲しそうな表情がまたいい。最後のシーン、朝鮮戦争のときの軍のエンブレム入りのライターをこんなときに使うとは。

冒頭は妻の葬式。集まる親戚、息子夫婦に孫たち。ただ、そこには、厳粛な雰囲気はなく、緩み切った空気があるばかり。それを苦々し気に見詰める主人公のじじい、コワルスキー。周囲も、なに、この嫌味な皮肉屋クソじじい、ウザいんだけど、と敬遠している。
それでもおかまいなく、だらしのない孫を叱りつけるコワルスキーじいさん。ますます嫌われる。
ベトナム人コミュニティとの心温まるふれあいと対照的にしているのだ。

ひょんなことから知り合いになったベトナム人の青年、タオのことを、最初は、おい、へなちょこ、と呼んでいたけど、もとの英語では、なんて言っていたのだろう。
タオの姉、スーが不良ヤンキーたちに絡まれていたとき、たまたま通りかかったコワルスキーが助けに行く。
不良ヤンキーども。なんだ、このへんなじじい。近寄んじゃねえ、ケガすんぞ。すっこんでろ。
コワルスキー。おまえら、怒らせちゃならん人間を怒らせちまったようなだな。
そして、ゆっくりと、指をピストルの形にして、不良ヤンキーどもに突き付ける。
ちょっとビビり出した不良ヤンキーども。な、な、なんだ、このクソじじい。あたま、だいじょうか。それで、脅しのつもりか。笑わせんじぇねえ。
コワルスキー。こんどは、ゆっくりと、本物のピストルを抜き出して、不良ヤンキーどもに突き付ける。
かなりビビった不良ヤンキーども。ひえええ、わーったよ。退散するよ。

最後のシーン。極悪半グレ軍団(自動小銃装備)へ殴り込みを掛けるシーン。タオを地下室にあえて閉じ込めるのだ。そしてタオに告げる。人を殺すってえのは、どんなことだかわからんだろう。単身、極悪半グレ軍団のもとに向かうコワルスキーであった。
高倉健だよ、鶴田浩二だよ。懐かしの任侠映画だよ。
ただ、任侠映画の場合、そのシーンに至るまで、けっこう、ためがあって、ちょっと、あざとい感じもあるんだよね。
でも、この映画は、いきなり、そのシーンになったりする。感情を強く揺さぶられて、本当にいいシーンだ。

極悪半グレ軍団のもとに向かうコワルスキー。でも、実は、反撃しないんだよな。それが、なんとなく、わかるようになっていて、本当に、本当に、悲しくなる。見るものに最後のシーンを予感させつつ、最後のシーンに進んでいく、というのが、本当にすばらしい。
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