ありがちなミュージシャンの挫折物語かと思って観たら、不思議な肩透かしになった。
過去人気を博し、今はアル中で自堕落な(体型も自堕落な)ドサ周り歌手にまで落ちぶれた57歳の男の話だ。
実はミュージシャンとしては優秀で作曲の才能があり、周囲や弟子も作曲業を進めるものの、過去の栄光にこだわって耳を貸さない。
ここで登場するシングルマザーとの出会いがあって、かねてのこだわりを捨てるきっかけとなるものの、自堕落な生活が抜けられず、彼女にキッパリと捨てられる。
この時ようやく自らの生活を変える決心をする。
酒をやめ、身辺の混乱した環境を整え、まっとうな生活を送るようになる。
残念ながら彼女との復縁はかなわなかったが、真摯に人生に向き合うようになった男は作曲家としても成功し、人間としても(体型もスッキリして)円熟する。
つまり本作の教訓は、生活を整え、まじめに生きよう、ただ一度心変わりした女性の心は戻らない、ということだ。
何とも、拍子抜けするほどまっとうな映画だった。
その分、芸術性には欠けるのはやむを得ないか。