月うさぎ

デトロイト・メタル・シティの月うさぎのレビュー・感想・評価

4.2
人気ギャグ漫画の笑激の実写化。
松山ケンイチが両極端な若者を演じきる凄すぎる映画
そして音楽映画としても立派な作品だと私は思います。

渋谷系ミュージシャンを目指し上京した気弱な青年、根岸崇一(松山ケンイチ)は、
事務所の女社長(松雪泰子)の趣味により自分の趣味と正反対のデスメタルバンド『デトロイト・メタル・シティ(DMC)のボーカリストをやらされる。
素顔のまったくわからない白塗りメイクで、ヨハネ・クラウザーII世という悪魔キャラを演じ、大ブレイクしてしまったためにドツボにハマる根岸の苦悩。

まず、パロディとしての面白さがあります。
ロック好きならいろいろな要素が取り込まれ笑いのネタに作りこまれていることがわかるでしょう。

当たり前すぎる基礎知識かもですが、念のために申し上げると
『デトロイト・メタル・シティ』というタイトル自体KISSの『デトロイト・ロック・シティ』という代表曲からとったものですし、
悪魔キャラ&歌舞伎にインスパイアされた白塗りメイクもジーン・シモンズが始めたものです。

原作ファンだけに受けようとするのではなく、あえて一般大衆に打って出た勇気。
(真のロックファンからは怒りを買う可能性もありですから)
喜劇として楽しく演技も堪能でき、恋もあり親子の情も描き、
そして何よりも音楽がある♪

漫画だと音楽は省略できるけれど、映画だとそうはいかない。
本物の音楽が必要とされるわけです。
そしてそれにきっちり答えている。これは偉い!
音楽プロデューサーを務めた北原京子氏のお仕事です。
クラウザーの細かい所作にあわせギターの音を録り直すなど「かなりたちが悪いくらいこだわった」そうです。

根岸が本来好きな「渋谷系ポップス」として「甘い恋人」という曲があります。
この曲だけは映画中で松山ケンイチ自身が歌っております。チェックすべし。
「いい曲だけどバカにされる曲を作ってください」と本物の渋谷系ミュージシャン、カジヒデキに依頼してできた曲。
「原作のそのシーンを何度も読み返し、根岸君に成りきって作曲しました。」
だそうです。お疲れ様でした(^^)

DMCのオリジナル曲としては、主題歌「SATSUGAI」「恨みはらさでおくべきか」
作曲と歌は、OBLIVION DUST(オブリヴィオン・ダスト)およびてVAMPSのK.A.Z.であると巷では言われております。
(アニメ版では声優さんが歌っているそうです。)

松山ケンイチはロックを歌う人でも、楽器を弾く人でもないのに、共にリハスタに入り音楽の作動を身に着けてクラウザー=根岸を演じたというのですが
多くの観客に彼自身が歌っていると思われたほど、サマになっています。お見事でした!

私は他の映画のレビューで「本人の演奏です」と褒めてますけど、いいんですよ、映画なんですから別に本物の演奏で無くたって。演技がプロであるならば。
芸能人かくし芸大会じゃないんだから。
仕上がった映像がより効果的であるべきで
ただ、やはり本物は本物で褒めたいのですよね。

【おまけ】
KISSのジーン・シモンズご本人の出演も大きな話題になりました。
映画の中では気持ち悪い呼ばわりをされる甘い甘い曲を見事に作ったカジヒデキは
映画の冒頭部、学生役で代表曲「ラ・ブーム」を歌い映画出演を果たしています。
月うさぎ

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