ワンコ

ダウン・バイ・ローのワンコのレビュー・感想・評価

ダウン・バイ・ロー(1986年製作の映画)
5.0
【旅③/仲間】

ジム・ジャームッシュのデビューから6番めまでの作品は、全て旅がモチーフだと思う。
出会い/集い、良し悪しではなく、その成り行きを見つめているのだ。
そして、出会い/集い、旅するのは、僕達のことではないのか。
(※ これら6作品のレビューは書き出しが同じです。すみません。)

「Down By Law(ダウン・バイ・ロー)」は、アメリカのジャズの世界では、尊敬に値するという意味で使われ、刑務所では、「気の合う仲間」や「頼りになるやつ」という意味で使われるスラングらしい。

この作品では、明らかに後者だ。

舞台は南部ルイジアナ州の州都ニュー・オリンズで、フランスが統治した時代もある。
オリンズは、フランス語のオルレアンが語源だ。

そして、ジャズ発祥の地。

「パーマネント・バケーション」でパーカーが最後に船で向かう先は明らかではなかったと思うが、港で会ったのはパリから来たストレンジャー(よそ者)だったことを思い出すし、パーカーが路上で出会ったのサックス奏者は、ニュー・オリンズを舞台にすることを予め示唆していたのだろうかと考えたりする。

作品では、アウトサイダーのジャックと、元DJのザック、イタリア人旅行者のロベルトがニュー・オリンズの刑務所で出会うのだが、ジャックとザックはどうも罠にはめられた感じで、ロベルトが捕まった理由は、たどたどしいロベルトの英語のせいで、詳細は判然としない。

だが、この3人が心を交わし、脱獄を実行し、逃避行する様は、何か前作の「ストレンジャー・ザン・パラダイス」に続いて、出会い/集う感じがあるし、こうした出会いを通じて、たとえ一時的とは云っても、仲間が出来るアメリカという国、更に、僕達の住むこの世界を、ジム・ジャームッシュは、良し悪しではなく好きなのだろうなと想像してしまう。

また、こうした脱獄劇に、ありがちな復讐劇などないのも、何かジム・ジャームッシュらしい。

そして、三者三様の旅。

ずっと一緒でいる必要なんてない。

道は一つではない。

また、違う出会いがある。

ジム・ジャームッシュは、それが、僕達の住む世界のありようだと言っているようが気がする。

ジム・ジャームッシュは再び肯定して見せたのだ。
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