福井康之

機動警察パトレイバー2 the Movieの福井康之のレビュー・感想・評価

5.0
押井守節炸裂だね。

1999年の東南アジア某国にて、PKO部隊として派遣された柘植行人の陸自レイバー小隊が、ゲリラ部隊と接触、本部からの発砲許可を得られないまま一方的に攻撃を受けて壊滅する

2002年冬、自衛隊の戦闘機F-16Jらしき飛行機から放たれた一発のミサイルによって横浜ベイブリッジが爆破される事件が起こるが、これは始まりにすぎなかった

「奴さん一人で戦争でもおっ始めようってのか?」

事件に関する様々な情報が錯綜する中、南雲と後藤の前に、陸幕調査部別室の荒川と名乗る男から柘植行人の捜索協力を依頼されるが、直後にバッジシステムへのハッキングによって、航空自衛隊三沢基地所属機による幻の東京爆撃が演出されるという事件が発生

「誰もが"まさか"と思い、同時に"もしや"と疑いを否定できない…あのベイブリッジ以来ね。」

警察はこの事件を利用して権限強化を図る政治的思惑から、自衛隊に対して過剰な対抗行動に出るが、これにより各地の自衛隊基地や駐屯地が抗議のため篭城するという事態にまで発展してしまう

「血まみれの経済的繁栄、それが俺たちの平和の中身だ。戦争への恐怖に基づくなりふり構わぬ平和、正当な代価を他所の国の戦争で支払い、そのことから目を反らし続ける不正義の平和。」

篭城責任をとって陸海空の幕僚長が辞任、政府は事態を混乱させた警察を逆恨みし、治安出動命令を下すのだが、都内に陸自が紛れることにより、これが柘植のシンパの隠れ蓑となる

「首都を舞台に"戦争"という時間を演出すること、犯人の狙いはこの一点にある。」

"時間と空間の演出こそ映画の演出である"という押井監督の言葉が示す通り柘植は押井監督そのものですよね。

「気づいたときにはいつも遅すぎるのさ。」

アニメなのに小説の世界にのめり込むようにして観れる映画ですが、かつての第二小隊メンバーが招集されるあたりからパトレイバー出撃のラストスパート、太田さんの射撃訓練なんかの布石もしっかり回収されたり、短いですけどちゃんと見せ場があって、今回の主役である後藤、南雲、柘植の3人の関係なんかも見ものです。

「しのぶさん、刺し違えてもなんてのはごめんだよ。彼を逮捕して必ず戻るんだ…俺、待ってるからさ。」

結局、何度観てもおもしろい。

「結局俺には…連中だけか…。」

因みに柘植行人のモデルとなったのは軍事評論家の柘植久慶さんで、柘植行人は"告げゆく人"という言葉遊びになってるそうです。
福井康之

福井康之