声変わり前の少年の生々しく瑞々しい欲望の目覚め。ある夏のひとり旅。三人乗り自転車。尾けてくる男。玩具の拳銃。一列前の髪の香り。目で追う太腿。触れて包む。理由などない。どのくらい時間が経っただろう。しばし歩行と手元。
列車の向かいの席や窓の外の路地でいちゃつく人たち。遂には人目大勢の中を歩いてていきなりキスしてる。視線は釘付けでも口角は上がらない。かといって目が合っても困る。曲芸を真似する。満足に上手くいって澄まし顔。踏ん反り返って足組んで座ってタバコ吸い出す。
手遅れになる前に。長く目を閉じて。草原に寝転び肘ついて語りかける。走る車窓から見える街の灯。風が吹いていた。