めしいらず

浮草物語のめしいらずのレビュー・感想・評価

浮草物語(1934年製作の映画)
3.4
1959年の小津自身によるリメイク版ともちろん同じ物語である。浮き草のようにどこにも根を張らず生きる旅芝居の役者である父が、それ故に名乗りを上げぬ悲哀。若い息子はそんなことはつゆ知らず彼に懐いているけれど、それを知った時は直ちには心が追いつかない。役者仲間の女の意地悪とも思える差し向けに見え隠れする彼女のいじらしさ。男を待つ母親の側の本当の思い。四人四様の思いは交わらず誰も悪くないのにそれぞれが痛んでしまう。しかし古い生き方に馴染んだ者は果たせぬだろう約束を胸にまた浮き草の人生の続きへと歩み出す。一度は離散した仲間達がまた彼の元に集う。一蓮托生の絆の粋。浪花節も小津の手にかかればお涙頂戴とは無縁の上品な仕上がりになる。
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