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リトル・ダンサーのmanacのレビュー・感想・評価

リトル・ダンサー(2000年製作の映画)
2.5
残念ながら期待したほどではなかった…。
もちろん、ビリーを応援する家族愛には感動して泣けたけれど。

ビリーのバレエの才能や情熱がイマイチ伝わってこなかったのが主な要因かと。
バレエの事なんて分からないから、ビリーの才能にに関してはウィルキンソン先生の言葉でしか理解できる材料がなかった。設定的に身近にバレエを理解している人もいなかったし、ウィルキンソン先生がどの程度のバレエ講師なのかもわからないし、オーディションの反応もどちらとも取れる反応だったので、観ているこちらとしては落ちぶれバレエ講師の戯言ともとれる状態だった。
これで、バレエとは無縁の街の人たちが褒めそやしたり、オーディションで審査員たちにオーバーリアクションさせたら不自然になってリアリティがないと思ってしまうんだろうけれど。

当時のイギリスの時代背景を知らなかったのも、家族愛が伝わりにくかった原因の一つだった。
どうも親父の反対ぶりが腑に落ちなかった。田舎町で男女の特性が明確にされているのはなんとなく理解できるが、特にビリーが友だちや近隣に揶揄われることもなく、オーディションの際は皆協力的だったし。鑑賞後にちょろっと当時の事を調べてみた。
それで分かったのが、イギリスには階級意識というものが根強く残っているらしい。ビリーの父親は労働者階級であったが、バレエは上流階級の趣味だったようだ。男性社会、労働者階級の象徴のような炭鉱夫の親父が頭ごなしに反対するのも頷ける気がしてきた。
つっけんどんな親父だったけれど、炭鉱ストの事情が少し分かると、全編に親父が息子に深い愛情を抱いている描写があることが分かった。妻の思い出のピアノを燃やさなければならなかったこともストが長期に及び収入がない状態だったのならば致し方ないことだったのだろう。50ペンスのボクシングのレッスン料も決して楽なものではなかったのだろう。親父は自分にできる限りの物を我が子に与えたかったのに違いない。だから、バレエの事等何も分からなくても我が子の踊る姿を見て応援しようと思ったのだ。


ラストの舞台にマイケルを呼んでいるのに、ウィルキンソン先生を呼ばなかったのは残念。誰もがビリーを応援していたけれど、ウィルキンソン先生なくしてビリーはその舞台に立つことはなかっただろうに。
それと1回くらいまともにビリーのバレエを見せて欲しかった。

本篇とは無関係だが、マイケルの人生もなかなかハードそうだ。
ビリーの何倍ものマイノリティ派のドラマがありそうで、気になるところ。
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