ブタブタ

散歩する惑星のブタブタのレビュー・感想・評価

散歩する惑星(2000年製作の映画)
2.5
冒頭の日焼けサロンの場面。
日焼けマシンに横たわる人物に話し掛けるくだりは『ブレードランナー』のカットされたシーン、レプリカント・レオンに撃たれ重傷を負った(つまり始めは死んでなかった)ホールデンが棺桶の様な「鉄の肺」で治療を受ける場面に似てる。
只の日焼けマシンがその非現実的な色調と合間ってSFのガジェットの様に見える。

実は昔レイトショーで見に行って寝てしまい最初から最後迄どのシーンも全く記憶に無し。

「シャーベットシルバーの独自の映像~」との評に惹かれて見に行き勝手に近未来SF映画だと思ってたんですがそうではないのですね。

ストーリーも前後の場面の繋がりもほぼなく、長回しと止め絵。
「絵画的」との評が多く見受けられますが映画、映像と言うより見せたい「絵」がまず最初にあってその「絵」に向かって全てがゆっくりと動いてる様に見えます。

紀里谷和明監督『CASSHERN』もキャシャーンがジャンプして空中で静止してパッと止まったり着地ポーズや敵のツメロボを幹竹割りにする所をゆっくりゆっくりと見せたり動きよりも監督の頭にある決めの「絵」を見せる事が目的でアクションはその「絵」に行くまでの過程でしかない。

ロイ・アンダーソン監督も紀里谷和明監督も動きのある映像より「絵」を重要視してる様な、映画と言うより映像(止め絵)による美術展覧会の様な、全く違う映像作家に見えて資質の部分で意外と共通してると思いました。

全てが淡い白と灰色によるモノクロ映像(?)
CGやデジタル処理ではなく実際に建物から小物に至るまで本当にあの色調のモノを全部使っての驚異的なアナログ撮影との事で、エキストラ含め大量の白塗りメイクの人達だけで途方もない手間が掛かってると思いますが、その偏執的な迄の独自の映像への拘りは凄いとしか言いようが無いのですが、その途方もない手間ひま掛けた映像に対して「その手間ひまが凄い」と言う感想しか持てなくて、映画の内容やストーリーに特に惹き付けられる所は無いし全てが平坦でただひたすら「あの世界」を歩いて見学してるアミューズメント施設みたいで映画としてはどうかな?と思いました。

でも思ったんですがジョジョ実写版(未見、見る予定無し)に必要だったのはこういうセンスでは。
皆さんのレビューを読むにつれ、あーやっぱりと思うんですが、キャラクターのコスプレをした俳優達がCGのスタンドを出して戦うだけの一番詰まらない着地点に落ち着いたんだと。
Vシネマ出身の三池崇史監督には始めからないセンスでジョジョとは根本的に合ってないです。
けっしてVシネマをバカにしてるわけでは無くて、少ない予算や撮影時間の中でスタッフ・キャストの頑張りや目に見えないプラスアルファ的な、情念や役者そのものの魅力を引き出すと言った所謂「アート作品」とは全く方向性の違う物。
なので三池崇史監督による『ジョジョ』はいっその事CGその他特撮一切無しでスタンドも見えない、役者の演技だけで全部やるとか、そのくらい出鱈目やってくれたらファンから総スカンを食っても自分は断然支持すると思ってたのですが結果は前記の通りでした。

ジョジョを実写でやるならロイ・アンダーソン監督の様な映像作家、空を紫にして地面をピンク色にするとか「ジョジョ立ち」を長回しでひたすら見せるとか、そういったセンスを持った監督でなければダメだったと思います。
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