えいがドゥロヴァウ

タクシデルミア ある剥製師の遺言のえいがドゥロヴァウのレビュー・感想・評価

4.3
7年前に書いた感想文を転載してみます
この作品を「極めつけの変態映画」と言っているあたりが青い


ハンガリーで巨額を投じて製作され、奇妙な親子三代の姿を描いた極めつけの変態映画。

第二次世界大戦中の40年代、祖父は国境近くの警備にあたる軍の中尉にこき使われていた。
便所の隣にある物置で家畜以下の生活を送る彼の楽しみは、覗きや妄想を肴にした自慰行為。
ある日、彼は中尉の妻に誘惑され性行為に及び、それを知った中尉によって射殺されてしまう。

共産主義政権下の60年代、大食いの才能を見出だされた父は、国の威信をかけた大食い大会に出場する有名選手だった。
彼は大食いの女性チャンプと恋に落ち、一人の息子を授かる。

そして現代、太りすぎて起き上がることもままならない父を世話しながら、剥製作りで生計を立てる息子。
剥製に取り憑かれた彼は、父の死をきっかけに究極の剥製作りを始めるのだった。

世代毎に異なる、それぞれが極端に拡大された執着。
祖父のセックス、父の食、そして息子の再生と保存。

男性器、嘔吐、生物の臓器など、生理的な嫌悪感を催す対象を写しながらも、つい見入ってしまうほど巧みなビジュアルセンスで綴られる映像。
どギツいけれど、ひとつひとつの描写はしつこくなく、傍観するように静かに描いているので、逆に作り手の潔癖さのようなものを感じた。
そうではなく、ただの猟奇的な嗜好を感じてしまっていたら、観るのを止めていた。

もう観なくてもいいし、余程の映画好きや変人にしか薦められないけど、記憶には抜群に残るし嫌いではない作品。
ただ医療の手術映像が見られない自分にとって、終盤はとってもしんどかった。