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ウンベルトDのプレコップのレビュー・感想・評価

ウンベルトD(1952年製作の映画)
4.4
貧困を描いた悲しき傑作
説明的でなく貧しい状況を伝える。それもセリフばかりの作品より画の力で見せてくれるから、真に迫った悲しみが押し寄せる。

ウンベルトDの衣装に着目すると、さらに各場面の緻密な演出がわかる。彼は貧しいが、プライドが高く、品格がある。服は常にスーツ(それも質が良くておしゃれ)で、帽子も忘れない。冒頭のデモのシーンでは同世代の群集が見られるが、その中でも存在感がある。そんな彼が外で帽子を取る2つの印象的なシーンがある。それは、忠犬フライクに帽子を持たせるところと、ラスト。共通しているのはそれまであったプライドを捨てたということ。表情やセリフなど細かい心情を伝える表現があるわけじゃないけど、痛いほどその辛さがわかる。

俳優陣も印象的で、知ってる人は1人もいない(素人を起用しているので当然)が、胸を打たれる。特に薬師丸ひろ子に似てるマリアと、端役だけど納谷悟朗みたいな声の病院の隣のおじさんの存在感が良かった。なにより、フライクを演じたワンちゃんがすごい。アカデミー賞レベルだと思う。
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