ウンベルトDの作品情報・感想・評価

「ウンベルトD」に投稿された感想・評価

torreya

torreyaの感想・評価

4.1
ファシズムや戦争から急激に復興を見せた1950年代の始まりに作られた映画。役者がほぼ全員素人であることでも知られるが、それを抜きにしても一生に一回は見た方が良い作品。僅かな年金で生きる老人を描く冒頭は至極退屈に見えるし、テンポも遅いが、対照的な力強いラストシーンはきっと一生記憶に残るはず。

このレビューはネタバレを含みます

無力…。
年とって貧乏だとこんなにどうしようもないのか…。

このウンベルトじいさん、確かに頼りないしちょっと抜けてるんだけど、別に非常識な人間ではないんですよ。

普通に一生懸命働いて、老後は年金でゆっくり暮らそうとしていただけの普通の老人なんです。

普通の老人だからこそ、作中で盗みや詐欺なんてやろうともしないし、物乞いをやるのも恥を偲んで恐る恐る。
知人にお金を借りようとする時も、言い出し辛さを隠せもせず、嘘も吐けず、あれこれと遠回しに言えたり言えなかったり。

こういう普通のおじいちゃんの尊厳が、全く劇的でなく普通に奪われる点が恐ろしい。

アパートのメイドや看護師のような一部心の優しい人もいて、とはいえそれでウンベルトじいさんは救われきらず…。

終止救いがないけど唯一の癒しはフランク。なんだあの可愛い犬は。
飼い主が恥ずかしがるもんだから代わりに物乞いしてあげるフランク(最中に知人が通りかかり、あたふたと誤魔化すウンベルトじいさんの惨めさったらない)、保健所で処分されそうになるフランク、大家を脅かす為に放り投げられるフランク…。

この愛するフランクを捨てる為に奔走しなければならず、また金がない為にそれすら上手くいかない無力さの極み。

心折れて自殺しようとするも、それすら失敗。
自殺に巻き込まれそうになってやっとフランクはウンベルトじいさんの元を離れるも、今度は寂しくなって松ぼっくりで仲直りする始末。

本当に、何も何も何も何も上手くいかない。
何も出来ない。何も成功しない。
普通の老人ウンベルトの、どうしようもない無力。

ラスト、子供のように遊ぶ老人と愛犬の微笑ましいシーンに、一切の救いがない事が恐ろしい。
まさ

まさの感想・評価

4.0
1匹のワンちゃんを連れたウンベルトおじいちゃんのお話。

初見でしたが、はっきり言って超面白いですよ。ウンベルトおじいちゃんは年金暮らしなんですが、年金のほぼ全額を家賃でもっていかれるという超苦しい生活。そんで家賃の滞納から20年住んでたアパートの家主と揉め、追い出されそうになるんです。本作を観終えて、当時のローマの人達はこんなに苦しい生活だったのかと…アパートの中は蟻だらけで環境も最悪だし、相当大変ですね。

本作は「自転車泥棒」の監督さんで、伊・ネオレアリズモの傑作です。この監督さんの作品はとにかく雰囲気が最高で個人的にはすごい好みですね。味わい深いんです。本作はワンちゃんにも癒されるし、人によっては「自転車泥棒」より好きって人結構いそう。スコセッシの好きな映画リストにも本作が挙げられてるので、興味ある人には必見だと思いますよ。
KnI

KnIの感想・評価

3.0
老後について考える。
医療職に勤めていると、人生の末期に出会うことは多い。
そうだ、貯金しよう…

このレビューはネタバレを含みます

・老人と犬とメイド
・ほとんどサイレント映画でもいいくらい皆の表情のカットが優れてる
・後半は愛犬フランクとのほぼ二人芝居状態、それくらいフランクの演技が凄い
・終盤の老人ウンベルトの哀愁が「生きる」の志村喬とダブる
・電車に近づいてから公園を二人ではしゃぎながら駆けていくラストシーンが切なさのオンパレード
dude

dudeの感想・評価

4.0
散々働いて年取ってやることが物乞いか?という葛藤とか見てられない。犬がどうにもならないせいで死ぬこともできないわけだが、それが生かされているという方向に反転するラスト最高。
bowzZ

bowzZの感想・評価

4.5
70年近く前の映画だけど、これは現在や将来にまんま当て嵌ります。
現在でもこういう老人は少なからずいるだろうけど、世界最速で超高齢化している日本なら特に、20~30年後にはこんな老人が溢れ返りそう。
加えて更なる無闇な健康長寿化、拝金主義。
人間社会は結局昔からずっと、こんな老人の救済策を何も打ち出せてないのだ。ITだスマホだドローンだAIだ言ったところで。
もう一つ、この映画には飼い犬(ペット)の命についても考えさせる側面がある。人間と犬の生命の末路は、共に悲惨なだけか・・・
KR

KRの感想・評価

4.0
「不幸は無知につけ込んでくる」
だが官吏だったウンベルトもまた不幸に襲われた。不幸は誰にでも訪れる。自分は大丈夫だと思っていた人ほど、絶望し対処できない。ウンベルトの家は映画館の隣の4F、女中付き。老後の貯金まではできなくとも不自由ない生活だったのだろう。

もう会う人会う人に支援を頼みたいところだが言い出すきっかけを掴めず、或いはけんもほろろで、そうこうしている間に部屋はどんどん破壊されていく。その様子が追い詰められていく彼の心情とリンクしていて、独白をしない主人公の感情にも移入することができる。

自分はこの先どうなるのかというぎりぎりの不安と恐怖。大事なものは全て売った、もう物乞いをするしかない、いやそんなことできない、やったこともない。あまりに辛い葛藤。
それを越えて物乞いをしている人たちに同情が集まるのは、その葛藤が少しでも想像できるからなのだろう。私も人の気持ちが想像できる人でありたい。

昔のイタリア映画に出てくる家具はとても好ましい。特にあの小さなベッド。マエストロヤン二なども体を縮めてああいうベッドに収まっている。こういう部屋にすれば豪華でなくともこざっぱりとまとまるのだなあと思うが、なかなか真似できるものではない。
また台所仕事の様子も良い。手間をかける良さというものが感じられる。

退院してにわかに元気になるところは、この先どうなるかを考えるといよいよ切ない。

家賃も払えないのに、最後までフライクを見捨てないところは最も考えさせられる。今なら、犬なんか飼うなと叩かれるだろう。だが本来はこちらの方が余程正しいように感じられる。家族であり、生きる支え。フライクは決して死を選ばないし、ウンベルトに選ばせない。生きることを教えてくれたのがフライクかも知れない。きっとフライクと離れるまではウンベルトの人生は終わらないだろう。

冷たい人もいる一方、困窮して道端に立つ人に次々と情けをかける人がいるのは素晴らしい。
家賃を払わなければ退去させるのは間違いではないが、こっそり食べ物を分けてやるマリアや、微妙なラインの患者を留まらせてやる看護婦、おかしな患者に付き合ってやる余裕のある救急隊員らの方が圧倒的に魅力がある。
できるものなら後者でありたい。
Haruki

Harukiの感想・評価

4.3
圧倒されるほどのリアリティを持った作品。
社会的弱者の抵抗や疲弊を、寄り添いながらも鋭く描いている。

物乞いになりさがるのを思い留まるフライクとのシーンは映画史に残るような名シーン。

素人とは思えない俳優陣の演技にも惹きつけられる。
メル

メルの感想・評価

4.2
原題「ウンベルトD」とは、この主人公の名前ウンベルト・ドメニコ・フェラーリのこと。

こうゆうストレートで無駄な説明の無い題名が好きだ(笑)

舞台は戦後のイタリア。
日本と同じ敗戦国のイタリアでは急激なインフレで、長年公務員として働き税金を納めてきたウンベルトも目減りした年金では家賃も払えず、アパートを追い出される寸前。

同居の愛犬フライクを連れて金策に知り合いを訪ね回るも、皆自分の生活が第一でお金を貸す者は居ない。
物乞いをしようと街角に立っても、プライドが邪魔してどうも手が出せない。

追い詰められる彼の側で愛らしい仕草を見せるジャックラッセル犬のフライク。
誰ひとり身内の居ないウンベルトにとって我が身より大切な愛犬。
そのワンコの健気な表情と素晴らしい芸に癒されたり、胸が締め付けられたり。

厳しい現実をそのまま受け入れて生きて行くしかない人間と一匹の犬。
この2人の行く先はどうなるのか…。

監督のヴィットリオ・デ・シーカは「自転車泥棒」や「ひまわり」が有名。
「ひまわり」ではラストのソフィア・ローレンの表情に胸が締め付けられますが、今作でも何とも言えないエンディングに切なさが込み上げます。

イタリアのネオリアリズモの旗手として注目された監督の描く「哀愁」にすっかり心が持っていかれます。
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