たく

ウンベルトDのたくのレビュー・感想・評価

ウンベルトD(1952年製作の映画)
3.7
イタリアの年金生活者の悲哀で、なんだか日本の制度破綻と被ってタイムリーな話。

公務員を勤め上げたのに少額の年金で家賃も払えず滞納してるウンベルトが、人としての尊厳を保とうと奮闘するも行き場がなくなるのが辛すぎる展開。
若くて小顔の可愛い女中が妊娠して職場を追い出されそうってことを知って、同じような境遇に心通わせるのがジーンとくる。育児休業なんて有り得ない時代だしね。

家主が強欲なマダムで滞納金の分割払いを認めず、なんとか一括払いしようと金集めに奔走するウンベルトがついに物乞いまで堕ちるかってところで、愛犬のフランクに仕込んだ芸をまさかこんな形で利用するのか!ってシーンが悲しい。

中盤で鉄道のレールをじっと見つめるシーンがフリになって、木下恵介「日本の悲劇」的展開を予想させてハラハラしてからの、ラストの孤独な二人のいたたまれなさは「自転車泥棒」に通ずるね。
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