Laura

幻の女のLauraのレビュー・感想・評価

幻の女(1944年製作の映画)
3.5
いたはずの人間が忽然と消えてしまうという設定はヒッチコックの『バルカン超特急』を思わせるが、こちらはより異常犯罪者の描写にフォーカスしている。セリフのテンポの良さや展開の速さよりもシンボリックな絵で魅せるタイプのノワールだ。音楽も全く無い。女の風変わりな帽子や、脚線美を強調する網タイツといった小道具が効いている。最初、裁判のシーンあたりまではややまどろっこしくて、男が妻の死体に対峙して警察から取り調べを受ける場面でも感情的な揺さぶりは無かったが、エラ・レインズが夜の街でバーテンダーを尾行するあたりのシークエンスからかっこよくなってくる(余談だが厚化粧したレインズはグロリア・スワンソンのようだった)。レインズが事件の証拠を掴むために誘惑したドラマーとジャズセッションに参加するシーンでは、二人の衝動的で危険な関係性が素速く切り替わる連続カットで暗示的に表されている。
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