宝くじ付き国債のPR映画であることを忘れずに、偽の夫婦がドタバタを経て本当の夫婦になるラブコメとして仕上げてしまうボリス・バルネット監督はさすが「ソ連映画界の貴公子」と言われるだけのことはある(誰が言ったかは知らないけれど)。
物語よりも物の投げ合いだったり、追う者が追われて追われる者が追うという立場が目まぐるしく変化したりと劇中で起こるアクションの数々がリズミカルで楽しくなってくる。また本を読むものとしてではなくスクワットに使ったり、大事にしていた像が落下するも無事で拾おうとするも首だけ折れたりなどといったセンスある演出が単なるドタバタではない洗練された味わいをもたらす。
モンタージュの使い方だけではなくロングショット、画面が歪むなどといった映像の使い方も光っていて飽きることが無かった。
さすがに後半になるとPR色が強くなって少し辟易とするが、それでもラストのオチの付け方が決まっているので悪くなかった。
ヒロインのアンナ・ステンは美人ではあるが、劇中変な顔ばかりしているのが可笑しい。それでいて夫にキスをせがんだりする仕草がとってもキュート。