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毒婦高橋お伝のmitakosamaのレビュー・感想・評価

毒婦高橋お伝(1958年製作の映画)
3.5
実在したという高橋お伝の映画化。知らなかったのだが、実は複数回により映像化されている人物なんだね。
後の世まで“毒婦”などという汚名で呼ばれるのは不本意だろうに。

人を殺した事にかわりはないようだが、映画は史実よりだいぶアレンジされているようだ。だが明治という今よりも閉鎖された時代に翻弄されたという点では、史実と共通しているみたいだね。
女性の地位の低さ・貧困、それらに抗って逞しく生きたが、なし崩しに人を殺し罪を背負ってしまうピカレスク劇。

実際のお伝は、病気の夫の看病の末に死別。売春婦に身をやつしヤクザの情婦に。その後に借金を理由に商人の妾になるも金のもつれで殺害。
日本で最後に斬首刑となった女囚だそうな。

映画ではもう少し複雑。病気の夫がいるのはそのままだが殺されてしまう。
前の夫との間には娘がいる。が貧しく娘も死ぬ。
万引きに入った宝石店に捕まり、裏家業の人身売買に関わる。
イケメン警官をたらし込んで破滅させちゃう。

冒頭の警官に追われるシーンと人力車に乗り逃げるシーン。ここがかなり時間を取っていて中川信夫演出の冴えを感じる。特に人力車のくだりは同じカットを繰り返し使用することで不安感を煽る見せ方は流石!

中盤からの「横浜中華街は治外法権だから」というセリフも興味深い。人身売買の親玉に丹波哲郎が演じてるが、コレまた悪格好良い。お伝役の女優さんの美しさも素晴らしいし、ビジュアルがかなり良いのもポイント!

アメリカンニューシネマなどの破滅型主人公や、中島哲也監督作が好きなら案外ハマるかも。
他の高橋お伝作品も色々見てみたいね。
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