もとまち

春夏秋冬そして春のもとまちのレビュー・感想・評価

春夏秋冬そして春(2003年製作の映画)
3.9
一人の男の人生を通して、キム・ギドクが自らの人生との対話を試みた作品だと考えるのは、いささか短略的過ぎるだろうか。「冬」パートの主人公を監督が演じているのは単に役者とのスケジュールが合わなかっただけらしいけど。

とにかくこの映画には、あらゆる人間の欲望・激情・暴力に対する悔いと戒めが、四季折々の美しい自然の中で力強く描かれている。湖の上に浮かぶ小さな寺。少年の無邪気な残酷性とその罰。青年の性に対する溢れんばかりの好奇心。すべてを失った男が刻む般若心経。寺を受け継いだ男は赤子を拾う。男はやがて老いてゆき、赤子は成長して少年となり、すべては廻る。廻っていく。

これほどのものを描けた男が、性暴力の加害によって業界から追放され最後には亡くなってしまったという事実は、誠に残念でならない。
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