けーはち

春夏秋冬そして春のけーはちのレビュー・感想・評価

春夏秋冬そして春(2003年製作の映画)
3.6
一人の僧侶の半生と水面に浮かぶ寺を背景に、罪と贖罪の繰り返し、人間の営みを四季の巡りにリンクさせて観せる叙景詩的なドラマ。

キム・ギドク監督は神学大学まで行っており間違いなく仏教徒ではないが、彼の好んで描く救われない因業の繰り返しが輪廻転生のような東洋的な円環構造として行き着いたのだろう。墨絵のような秘境の四季折々、動植物と人の営みの織り成す画は端整ながらも躍動し、美術は仏教彫刻や絵画的センスに満ち溢れ、国民的民謡「アリラン」のアレンジをBGMにした監督自ら演じる僧侶の肉体による贖罪表現は、真摯かつ悲壮にして美しい。まるで自らが性加害で母国を追われ、外国で流行病に罹患し、非業の死を遂げる未来を予見していたかのように……