ボブおじさん

新幹線大爆破のボブおじさんのレビュー・感想・評価

新幹線大爆破(1975年製作の映画)
4.1
Netflixにて監督:樋口真嗣、主演:草彅剛でリブート制作されることが決定している本作をおよそ30年ぶりに再鑑賞。

改めて見てみると本作がヤン・デボン監督の「スピード」に物凄く影響を与えたであろうことがよくわかる。

犯人と警察、国鉄の息づまる駆け引きをテンポ良く見せる本格クライムサスペンス。日本の絶対的な信頼と安全性を象徴する新幹線が〝乗客1500人を人質とした密室空間〟へと転じる。犯人が仕掛けた爆弾は時速80キロ以下になると自動的に爆発するようセットされており、犯人グループは国鉄に500万ドルを要求する。

犯人を演じた高倉健の動きを中心に、国鉄司令センター、警察捜査陣、そして新幹線車内。それぞれの人間模様を織り交ぜながら見せる演出とスリリングな脚本が融合した日本サスペンス映画の傑作。

減速すると爆破装置が起動するという、それまで誰も気づかなかった抜群のアイデアが、作品にスピード感と緊張感を生み出した。

当時は現在のようなVFX技術もない為、模型を使った爆破シーンのチープさは否めないが、その分オールスターキャストでの人間ドラマに比重が置かれている。

海外ではサスペンスに比重を置き本来153分の長編から犯人グループの出会いから犯行動機までの回想シーンを思い切りカットしアメリカ版では118分、フランス版では102分に切り詰めて編集されたらしい。

確かにやや冗長に感じる所もあるが、この犯人グループの前日譚は猛スピードで駆け上がる当時の日本の高度経済成長からこぼれ落ちた犯人たちが、新幹線という経済成長の象徴に対して爆弾を仕掛けるという経済至上主義社会に対してのアンチテーゼにもなっている。

今の観客には、テンポ良くサスペンスに特化した海外版の方が好みかもしれない。だが海外の観客はともかく、日本人であれば例え昔の出来事でも当時の社会背景や世相を踏まえたこのオリジナル版を是非見ていただきたい。



〈余談ですが〉
◆50年近く前の作品と考えると非常に良くできた映画だと思う。この名作を現在の技術とキャストでどう描くのかNetflixでのリブート版が今から楽しみである😊

本作では情報が閉ざされた社内でラジオから流れるニュースをに耳を傾け一喜一憂している描写がある。時代設定をどうするかにもよるがスマホやSNSがある時代になると本作とはだいぶ車内の様子も変わってくるだろう。

◆本作は一般的には犯罪サスペンス映画と受け止められているが、〝見苦しくみっともない〟3人の社会の負け組が、新幹線という高度経済成長の象徴を人質に社会に闘いを挑むアウトローの生き様を描いた作品でもある。そこには〝誰も殺さず、誰も殺されずに500万ドルの金を手に入れる〟という彼らなりの美学も描かれている。

◆劇中で警察幹部が言った〝女と50歳以上の老人を除けば〜〟という台詞に敏感に反応してしまった。そうかこの当時は50歳以上は老人だったのか😅