歌代

崖の上のポニョの歌代のレビュー・感想・評価

崖の上のポニョ(2008年製作の映画)
4.4
小学生の頃、親と一緒に観に行って以来久しぶりの鑑賞。
当時「面白かったー」と言っただけで「お前はわかってない」「どうかしてる」などと親に馬鹿にされたことが苦い記憶として残っていて、正直この作品に対しては自信がなくなってました。
しかし…!
最高じゃないか…!!!
宮崎駿作品の中でもかなり好きな一本となりました。
宮崎駿作品は「伝えたいこと」以外が凄まじすぎて、本人の意図と違う軸での評価をされてることが多いように感じます。
特に個人的宮崎駿ベストの『もののけ姫』は、作り手の意図を超えた面白さが溢れててめっちゃカオスなのが素晴らしいと思ってるのですが「本人の伝えたいこと」は成功してるのかと言われると疑問があるし。
これは宮崎駿の商業性と芸術性のバランス感覚によるものも非常に大きく影響してると思ってるし、彼の作品の命題なのではないかなと思っていました。(だからこそ最新作『君たちはどう生きるか』が胸に響く)

しかし、改めて観た『崖の上のポニョ』は宮崎駿の「伝えたいこと」を一番やれてるような感覚がしたのです。

ストーリーテリングの枠組みからの逸脱。
表現の切れ味。
生き生きとした「生きる」線。
…すべてに元気をもらえる。
エネルギーに満ちている。
「宮崎駿が子供たちに伝えたいこと」に関しては子供にとって理屈などわからなくても伝わる凄さがあるし(少なくとも僕は感じ取っていた)大人にはより響くと思いました。
理屈と感覚のバランス感が凄すぎる。
『もののけ姫』や『千と千尋の神隠し』と比べると肩の力が抜けてるのも良い。と友達と話したりしてた。
むしろ大人の方が見た方がいい。

「観てみろ、飛ぶぞ」じゃねえんだわ。
たとえ飛ばなくたって、飛べなくたって明日を生きるのにささやかな希望を与えてくれる。
そんな気持ちに観客をさせるのがどれだけ難しいか、なんとなくわかるよ。
宮崎駿の「若いけど、青くない」表現力は間違いなく僕がそれ以降のアニメを観る時の基準線になっていたことに今回気付いたし、こういうのをみて「アニメって素晴らしいよね」って言っていきたいんだよ、俺は。
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