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天保六道銭 平戸の海賊のqqfowlのレビュー・感想・評価

天保六道銭 平戸の海賊(1955年製作の映画)
4.0
天保9年(1838)。主人公の森田屋清蔵は、表向きは藩御用達の海産問屋、裏では海賊船を使った密輸で大もうけしている。ところが、女性問題で思いがけなく藩に命を狙われることになり、本店のある平戸にいられなくなって、支店のある大阪へ移り、仕返しの機会を狙う… というような話。

白黒で画質はあまりよくなかったが、意外と面白かった。江戸末期の閉塞感、お上は庶民のぜいたくを禁止して自分たちが吸い上げることばかり考えている。前年には大塩平八郎の乱が起きている。主人公はアウトローで、登場人物は根っからの善人が誰もいない。

この映画が作られた1950年代ってどんな時代だったんだろうと、ちょっと思った。戦争特需で景気が良かったと教科書では勉強するけど、庶民にはお金が回ってなかったんだろうか。あるいはそういう時代は景気が良くても暗いんだろうか。未曾有の国土荒廃ということで考えれば、311後の現代みたいなもの?

主人公が画策する仕返しというのは、藩の特産品の取り引きを邪魔して財政を破綻させるという、商人的なやり方。チャンバラ一辺倒じゃなく、現実味があってよかったし、他にも、ロードムービーあり、メロドラマありで退屈しなかった。川渡りで人足に担がれるのとか、ヒロインは結婚したらちゃんとお歯黒をするといったディテールが印象的だった。
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