くろまめ

最強のふたりのくろまめのレビュー・感想・評価

最強のふたり(2011年製作の映画)
5.0
母に一緒に行ってと頼まれて、何気なく観たのに大当たりな作品でした。



冒頭から大丈夫?って心配しちゃうけど、『 September』が掛かって一気にテンションUp。
自分でも好きな曲掛かると嬉しくなった。
OPは秀逸だと思う。



オマール・シー演じるドリスがとにかく、最高!
はっきり言って教養無いし、マナーも悪いし、下品だし。
でもいいやつなの。
介護とか障害者とか、そう言うカテゴリーに縛られない。
1対1で誰とでも向き合うから、常に直球だし、裏表が無い。
合わないと感じた事には合わない。ってはっきり言うし、こうすればいいじゃん!って明るく行動する。
それがとっても嫌味が無くて、思わず笑っちゃうんだよね。
オマールにぴったりな役だった。



まさに大富豪と呼ぶのに相応しいフランソワ・クリュゼ演じるフィリップは凄く演じるの大変だったと思う。
なんせ、首から上しか自分の意思で動かせないから演じるのも全て表情とかセリフだけ。
カタブツな性格だから、明らかな表情はわざとらしくなるし、少しの目の動き、口角の上げ下げまで細かく意識しないといけない。
難易度高過ぎでしょう。
素晴らしい演技力だった。




このふたり全くの正反対なのに、馬が合う。
ドリスのポジティブなパワーにフィリップだけじゃなくて、みんなが引き込まれて笑いが生まれる。
その過程がとても素敵で、観ているこっちも一緒に笑っちゃう。




娘のしつけ方や、まさかの女遊びとか、大変なはずの介助入浴だって、全部ドリス流で明るくなる。
いかにもフランス!って感じの詩を綴った文通相手とのやり取りも、ドリスに掛かれば電話1本!すっごくウケる!
特に、誕生日のクラシックのシーンも好き!
しかもドリス選曲が、また Earth, Wind & Fire だから最高!センス良過ぎでしょう。




フィリップは身体が不自由なせいで、お金は腐る程あるけど、制限される物ばっかり。
それが嫌だって逃げ出す事も出来ないし、自分だけの秘密を抱える事すら出来ない。
周りは腫れ物を扱うみたいな対応だし、健康面の管理って感じで、快適な空間づくりに必死になるだけ。



でもドリスは違った。
ドリスは雇用主とか、障害者のフィリップじゃなくて、友達みたいに接する。ってゆーか、悪友。
すぐ悪ノリするし、遠慮が無いけど本音だから、一緒に居て自由を感じられる存在なんだよね。
しかもブラックジョークっぽい所も多いけど、上手い具合いに引き際をわきまえてるから、観ていて嫌な気持ちにならない。


障害扱ったネタも、下手したら抗議されるかもしれないけど、自然に友達と接してるだけだから不快じゃない。
すっごく絶妙に笑いにしてるから、エリック・トレダノ&オリヴィエ・ナカシュ両監督の細心の演出は素晴らしい!
しかも、脚本もふたりが書いてるんだから、ドリスとフィリップに負けないくらい、ふたりも最強だと思う。



個人的には、フィリップの大富豪たる資金源はいったい何なのか気になった。
あそこまで金持ちなら、きっと資産家の血筋なんだろうな。と、下世話な事を思った。



ラストはホロっと涙が零れるけど、あったかい涙なんだよね。



まだ観てない人には絶対お勧めだし、最近笑ってないなぁ。って人にも是非観て欲しい大好きな作品です。
くろまめ

くろまめ