このレビューはネタバレを含みます
★1987年に続き2回目の鑑賞★
テリー・ギリアム作品としては比較的わかりやすい内容なのだが、彼の作品の売りでもあった映像的な奇抜さは、正直、今観ると特に特撮シーンは陳腐な印象を受けざるを得ない。
また、主人公のサムがマザコンで気が弱く、結局ヒロインのジル(人格形成がちぐはぐなところがあるがまずまず魅力的)を窮地に落とし込んでいく張本人でもあり、全く同情できないのも魅力を感じさせない原因の一つ。
1987年映画館鑑賞時は評価5をつけたが、その要因は、やはり終盤の夢のシーンからのラスト。情報社会に雁字搦めにされた人間の生きづらさをそこまで徹底して描いてきたことに対比させた解放感からの、現実に引き戻されてのビジュアルと陽気に流れる「ブラジル」。ここの部分だけは映画史に残る衝撃のラストシーンといえよう。
中盤までは尺の長さも感じさせて今観ると平凡な出来だが、その伏線からのラストは観る価値が十分ある。
モグリの配管工を演じる、この頃、重い映画に出演していてキャリアのピークにあったデ・ニーロの嬉々として演じているさまが印象に残る。
また、エルトン・ジョン・バンドのパーカッショニストであったレイ・クーパーが、音楽面でも本作に関わっているとともに、冒頭の蠅を叩き落とす事務員を演じている。