フラットに見れば粗暴な男のはかない情愛の物語として楽しめる良作だが、意地悪く見ると夫婦愛のドラマがバイオレンスから妙に浮き出てしまっているように感じられる。それは妻があまりにイノセントな存在として描かれているからで(最後の台詞は流石に北野もその問題を感じてたんだろうな、と思いきや森プロデューサーの助言によるものだったという)、そのせいで主人公の突発的な暴力との対比が微妙。清濁併せ持った人物のドラマこそ北野映画の真骨頂ではなかったか。
つまみ枝豆に代表される、かつてないほどわかりやすいレベルで(単なる)憎まれ役が目立つのも今までの北野映画にはなかったことで、そこは気になった。
カメラワークなど演出は北野映画の総決算とも言うべきもので見応えあるが、反面何が起こるかわからない不安は希薄になった。