南森まち

ミツバチのささやきの南森まちのレビュー・感想・評価

ミツバチのささやき(1973年製作の映画)
5.0
スペイン内戦が終わった直後の1940年、小さな村に映画『フランケンシュタイン』の巡回上映がやってくる。
6歳の少女アナは、姉から「フランケンシュタインは村はずれの空き家に隠れている」と聞かされ、空き家に足しげく通うのだが・・・というお話。
怪物フランケンシュタインとスペイン内戦の共和派兵士をだぶらせて少女との交流と顛末を描く。

ストーリーは、田舎に住む幼い姉妹、精霊との幻想的な出会い、終盤の展開・・・。「となりのトトロ」の元ネタ。
だがテーマは大きく違う。映画制作時の1973年はスペイン内戦後から40年続くフランコ独裁政権下。
アナの母親が手紙に連ねる「大変な数年間でした」「たくさんのものが失われた」「外の状況が分からず、この手紙もあなたに届くかどうかわかりません」という文章は当時のスペインの閉塞感を表している。

余情を残す風景、美しい音楽、主演のアナ・トレントの美しさと演技、幻想的でありながらハラハラするストーリーは文句なし。

また、毒キノコ、懐中時計、黒猫、フランケンシュタイン、姉の危険な遊び・・・と、少女が死を意識する暗喩がちりばめられ、さまざまな考察をさせる名作。

邦題は「ミツバチのささやき」と何となく不気味だが、「ハチの巣の精霊(The Spirit of the Beehive)」の方が内容的にも正しいだろう。
超おススメ!