ShuheiTakahashi

ミツバチのささやきのShuheiTakahashiのレビュー・感想・評価

ミツバチのささやき(1973年製作の映画)
3.8
圧倒的画力と圧倒的眼差し。
アナが見ている世界。
誰にも何にも縛られることのないアナだけの世界。
子どものとき、自分もこんな風に世界を見ることができていただろうか。
忘れてしまった。
この視点、視線は忘れずにいたいな。

猫の首を絞めたり(行為的には大嫌い)死んだふりや炎の上を飛ぶ遊びをしたり、死をはっきり認識していて死に興味津々でいながら生を楽しむイサベルも良かったけれど、死と生が曖昧な世界のアナも良かった。
死の存在がだんだんと明確になっていくアナ。
最初は列車が近づいているのに、線路から離れないアナ、死んだふりの姉、血だけが残された精霊の住処。
毒キノコ。
そして死から生き返ったフランケンシュタイン。
生まれ変わったアナはこれからどんな風に世界を見るのだろう。
月明かりに照らされた窓が開く。
そこに自由はあるだろうか。

列車を見送るアナとイサベルの画は美しかったし、血で紅を塗るイサベルは妖艶だった。

ずっと何が起こってもおかしくないと思わせる緊迫感が続く。
私たちは死と隣り合わせで生きている。
それは創作と現実との関係のように。
ShuheiTakahashi

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