にわゆ

善き人のためのソナタのにわゆのレビュー・感想・評価

善き人のためのソナタ(2006年製作の映画)
3.5
私のための本だ。

いいラストシーンでした。

しかし、そこまでの過程はかなり淡々と描かれるので少し退屈と感じてしまう。

国家の秩序のために、人々を監視する人が心理的変化を起こした理由、それはなんだったのだろうか?
明確に示されたのは、「善き人のためのソナタ」を聞いたあのシーンだけである。
しかし、その後も監視は忠実に実行され、亡命を見逃したシーンでも、許さんと怒りを露わにしている。
その後は、積極的に監視対象の保護に動くわけだが、それは一度自分に生じた自己矛盾を貫くための行動だったともとれる。
それでも、一度芸術に感動した事実が、その人の人生をも変えてしまう。

私達には確固たる自分なんてものがないことが、科学的事実として証明されつつある。
私達の主観的経験も、所詮は脳の電気信号でしかなく、それは、外側の情報入力で容易く変えられる。そして、変わったことに自分自身すら気づかない。

だが、それ自体は全く悲観する事実ではないと最近は思えるようになった。
素晴らしい作品を見て感動できる。
たとえ、感動させられてるだけだとしても、この主観的経験によって魂は充たされてると思うのだ。
にわゆ

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