三樹夫

探偵物語の三樹夫のレビュー・感想・評価

探偵物語(1983年製作の映画)
3.6
女子大生の薬師丸ひろ子にボディーガード兼監視の探偵松田優作が張り付くこととなった。そんな中、優作の元妻のセックス相手がラブホで殺される。ヤクザから狙われつつも、ひろ子と優作が殺人の真相を探るというミステリー。
ただしこの映画の真のテーマはセックスになっている。プロットはラブホ殺人犯を探るミステリーなのは間違いないし、ひろ子も殺人犯探しにやる気を見せるが、いざ解決の時となったシーンには優作はおらず、プロットではミステリーものではあるがミステリーに注力しているように思えない。では何に注力しているかというとセックスで、役柄でも実生活でも女子大生のひろ子のすぐ近くにセックスが存在しており、セックスがひろ子の眼前に迫ってきては(主に優作によって)回避されていく映画になっている。
女子高生時代のひろ子のアイドル映画『セーラー服と機関銃』、女子大生時代のアイドル映画のこの映画、そして脱アイドルのアイドル映画『Wの悲劇』と、ひろ子のアイドル映画はその時の実際のひろ子とリンクし、あたかも一つなぎの作品群かのようになっている。女子高生時代のアイドル映画『セーラー服と機関銃』ではひろ子が性を知るという作品だったし、女子大生になったひろ子のこの映画ではセックスというものが眼前に迫っている。そして脱アイドルのアイドル映画『Wの悲劇』では初っ端でひろ子がセックスをするいうように、ひろ子が大人になるにつれてセックスがどんどん近づいてくるし、ひろ子のファンはひろ子にセックスが迫ってくるというのでヤキモキするというアイドル映画になっている。

映画が始まり大学のいけすかねぇ奴とひろ子がセックスしそうになるが、優作キャンセルが発動しセックスは回避。おそらく処女という設定なんだろうなと思っていたら、事件解決後の優作のアパートで処女というのが律義にも明かされる。その後も盗聴で財津一郎のセックスを聞くはめになったり、優作と元妻のセックスを聞いてしまう。そこから行きずりのセックスへと行きかけるがこの時に履いているのが赤いハイヒールで『セーラー服と機関銃』と繋がる。事件解決後、優作のアパートに押し掛けてモジモジしたり「帰るからね」×2の明らかにセックスしたそうなそぶりを見せるが、というよりセックスがしたくて優作のアパートに来たのが丸わかりだが、ここで優作が唐変木っぷりを見せ2度目の優作キャンセルが発動する。しかしラストで優作とディープキスをするので着実に大人の階段は登っているという作りになっている。
やたらセックスに注目する変なところがありながらもわりかしベタな上に、『セーラー服と機関銃』の相米や『Wの悲劇』の澤井信一郎に比べるとクセはないというか職人的な作品であるので、ひろ子の可愛さがベタに出ている。飲めもしない酒を飲むときに目をつぶるのがとんでもなく可愛いのと、優作のアパートに来て強がりながらモジモジしているのと「帰るからね」×2が可愛い。「帰るからね」っていうのは「帰るなよ」とか「泊っていけよ」って言って欲しいのが丸わかりだが、この映画の優作は唐変木過ぎた。
この映画の優作は不器用というか唐変木というかというようなキャラで、元妻から復縁を持ち掛けられても強がっちゃって、優作は元妻を振り返るが元妻は全く振り返らないというのが哀しい。振り返っているのは未練タラタラだし、元妻も自分のことを振り返って欲しいという願望がある。自分のことを名前を付けて保存してほしいみたいなやつ。復縁を持ちかけながらも元妻は全く振り返らず行ってしまうけど。しかしひろ子は優作のアパートを飛び出した後、何回も優作が追いかけてきてくれていないか後ろを振り返る。人生って上手いこと行かねぇな。ただひろ子が何回も振り返るのは男の願望がパンパンに詰まっている。

この映画を観てセックスや処女性に幻想持ちすぎじゃないというのは多分に思う。どんだけ執着するんだっていう。家政婦の岸田今日子ですら父親と肉体関係があったという設定で、映画が中学生かっていうぐらいセックスでパンパンになっている。結構ラノベっぽくもあり、キャラ設定やキャラの関係がおいおいラノベかとなる。女子大生に好かれるうだつの上がらないおっさん(といっても33歳だし優作だしというのはあるが)というのは男の妄想すぎやしないかと。ちなみにいけすかねぇ奴が乗っていたバイクはホンダのVT250F。
三樹夫

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