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殉愛のmitakosamaのレビュー・感想・評価

殉愛(1956年製作の映画)
3.0
スカパーにて。鶴田浩二演じる特攻隊員と八千草薫演じるお嬢様とのラブロマンス。そして心中モノでもある。

公開が56年と戦後11年目のことだが、当時の観客はどう感じたのかねぇ???
ぶっちゃけ、この映画の八千草薫に感情移入が出来た女の観客って居なかったんじゃないかしら?
というのも戦時中とは言えかなりハイソサエティなんだよね。立派な家のお嬢さん。男の方も特攻隊ながらそれなりに上官クラス。

それを最も象徴するのが、結婚式の夜のシーン。レコードを聴いて二人でダンスをするのだ。西洋音楽を親しむ非庶民っぷり。
と同時に、このダンスが初夜の暗喩なのは間違いない。だが直接的にセクシャルな表現を避けたが故に、八千草薫が純潔のママのように見える。

それはラストの毒薬を飲んでの自害にも通じる。ベッドに横たわり安らかな死に顔で、しかも男が寄り添って死んでくれる。
もう、眠れる森の美女のような美しさで穢れなく死ぬ。

戦後、日本人の殆どが貧困に喘ぎ死の物狂いで生きてきたのだろうて。綺麗ごとだけでは生きていけなかった筈。そんな国民にこの映画って本当に受け入れられたの???甚だ疑問だ。

ただ、円谷による特撮は素晴らしいね。モノクロで画質が悪いからこそ粗が目立たないのもあるが、アングルやライティングの上手さあってこそだね。
ここは見所!
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