がちゃん

地球は女で回ってるのがちゃんのネタバレレビュー・内容・結末

地球は女で回ってる(1997年製作の映画)
4.0

このレビューはネタバレを含みます

フェリーニ監督の8 1/2の主人公・グイドも映画製作と女性関係で悩んでいたが、本作の主人公・ハリー(ウディ・アレン)はそれ以上だ。

ハリーは小説家だが、現在スランプ中。

元妻や友人の不倫や性生活をモデルにその関係を赤裸々に書いて出版したことに関係者からは非難囂々。

ハリー自身も浮気性で何度も結婚と離婚を繰り返し、自ら社会不適合者と自認している。

ある日、自分の出身大学から自分を表彰してくれるという話が舞い込んだのだが、一緒に行ってくれるパートナーがおらず・・・

この時代のウディ・アレンの私生活を鑑みると非常に興味深い題材です。
ウディ・アレンと当時の妻だった・ミア・ファローとの関係が泥沼化。
マスコミに追いかけられてどん底だった時期。
本作では、そんなマスコミを地獄に落としてしまいます。

漫画的発想の作風も健在で、
彼が小説の中で創造した人物が、実在の彼に意見するシーンなどは相変わらずの面白さ。

ユダヤ人である彼が、必死になってユダヤ教や神を否定するシーンなどコミカルであるが、前回レビューしたルキノ・ヴィスコンティ監督の『異邦人』(1967)などと比べてみると、言おうとしていることは同じなのではないかと思えてくる。

いろんなしがらみから彼を解放してくれるのが、彼が創造した小説の登場人物たちというのも粋ですよね。

主人公の周りの市井の人々の生活から人生の意味を浮き上がらせるというのはいつものウディ節だが、本作は何かにムキになっているように性に関する描写が露骨なのが興味深い。

また、主人公がエレベーターで地獄に降りていくシーンでの地獄の描写は日本のそれによく似ているな、もっと言えば、中川信夫監督が描いた『地獄』(1960)にもよく似ているのも面白い。

浮気した主人公のところに死神がやってくるシーンがあるのですが、その死神の姿は・イングマール・ベルイマン監督の『第七の封印』(1957)に登場した死神をイメージしたのではないかと思えてくる。
映画ファンのウディだからきっとそうに違いな

漫画的演出と言えば、本作に・ロビン・ウィリアムスが登場するのですが、彼だけにいつもピントが合っていないというのも笑わせます。

ハリーが創造した人物らが本当はどんなことを考えているのかというのを見ることができる双眼鏡をのぞき込むシーンも漫画的でいいですね。

ウディ自身の代表作『カイロの紫のバラ』(1985)でスクリーンから登場人物が飛び出してきたような。

他キャストも豪華で、
デミ・ムーア、トビー・マクガイア、エイミー・アーヴィング、ビリー・クリスタルらが登場。

後半、ロードムービー的展開になるのですが、そのオチもウディらしいギャグで締めています。

シークエンスのラストを意識して切ったカットを連続させることによって過去と現在、現実と虚構の世界を自然に行き来させてくれる演出手腕も流石で、やっぱりウディ・アレンの映画はいいなと思わずにはいられない作品です。

面白い!
がちゃん

がちゃん