Sari

地球は女で回ってるのSariのレビュー・感想・評価

地球は女で回ってる(1997年製作の映画)
3.5
ウディ・アレン監督・脚本27作目。

自らの私生活を売りにしてキャリアを築いてきた、近頃スランプ気味の小説家の混乱と苦悩を、意表を突いたシチュエーションで見せていく。アレン監督・主演による独白的コメディ。

NY。自分の私生活をネタにして数々のベストセラーをモノにしてきた小説家、ハリー・ブロック(ウディ・アレン)は、最近スランプに陥っていた。ある日、既に別れた三番目の妻であるジェーン(エイミー・アーヴィング)の妹で、肉体関係があったルーシー(ジュディ・デイヴィス)が、ハリーの元に怒鳴り込んでくる。自分たちの関係をハリーが著作の中で暴露したためであった…。

◼️
ウディ・アレンはしばしば女性嫌いを思わせる映画をつくるが、神経症でセックスマニア、自意識過剰でいつも文句を言っている作家ハリー(ウディ・アレン)はその代表格である。
6人の分析医と3人の妻の手を借りても無責任かつ女好きの癖は治らない。ハリーの作品の登場人物も交えて、彼の人間関係論が展開される。
地獄を訪問したり、小説の人物と直接対面したり(『カイロの紫のバラ』を複雑にしたかのような表現である)、別れた妻や元恋人たちと悲喜劇を繰り返すうち、いつしか現実と虚構がないまぜになった世界に迷いこみ、奇妙な運命に翻弄される様子を、意表を突くパワフルなタッチで描いていく。
アレン監督自ら狂言回しの作家に扮し、観客をアレン独自の滑稽でシュールな映画世界にいざなう役を務めている。
デミ・ムーア、ビリー・クリスタル、エリザベス・シュー、トビー・マグワイアなど豪華俳優陣が共演を披露した中でも特に、ハリーの短編小説に登場するロビン・ウィリアムズ扮するどうしてもピントの合わない俳優は傑作。
短いが印象に残る台詞と鋭い人間観察は、大いにファンを喜ばせるものである。

本作を観ながら、スランプに陥った映画監督の混乱と苦悩描く、フェリーニ『8 1/2』を思い出さずにはいられない。
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